長かったCOP15も終わりました。結果については、ご存じのとおり、最悪の事態は回避しましたが、ようやくにして、次回のCOP16につないだという感じです。
今回見ていて思うことは、従来の「先進国対途上国」という対立の構図から、途上国の中で、中国やブラジル、インドといった、かなり経済発展を遂げつつある国と、そうではない、地球温暖化の影響を非常に厳しく受ける国々―その典型はツバルあるいはアフリカの国々―そこの利害が、かなり相反しているということが露わになった会議ではなかったかと思います。
いろいろな報道がありますが、日本と米国、EU、あるいはオーストラリアといった国々は、かなり協力し、協調しながらこの会議に臨むことができたと思います。主要国が集まり、首脳だけでの議論もかなり長時間行われました。鳩山総理も非常によく頑張ったと思います。
その長時間の会議の中でも、主要国の中の、例えば中国あるいはインドといった国々と、先進国との対立が非常に目立ったということです。
さて、これから1年後のCOP16に向けて、しっかりと対応していかなければなりません。今回合意ができなくて良かったと、胸をなで下ろす向きも国内にはありますが、これは決してそうではありません。やはり、しっかりと温暖化対策を世界で協調してやっていくということが、次の世代に対する責任を果たすことになります。
そういう意味で、これから1年間、日本もしっかりとまずは国内対策をやる。排出量取引や温暖化税(炭素税)、あるいは自然エネルギーの固定価格買取制度といったことを順次整備していく。
そして、国民の皆さんに「なぜ温暖化対策が必要か」ということを、しっかりと理解していただく。25%削減した場合に、どういう日本になるかということを具体的に示していく。そういった国内対策をしっかりとやっていくことが1つ。これは、残念ながら、今回欠けていた部分です。
そして、もう1つは世界の中で温暖化対策をしっかりやっていく。そのために、外交の資源を投入して、温暖化によって影響を受ける国々の賛同を得て、そして、そういった国々と先進国が連携しながら、しっかり全体として話をまとめていく。
中国やインド、ブラジルに対しても、自らが温室効果ガスをたくさん排出しているという自覚を持ってもらい、そして、そういう中で世界全体での合意を作っていくことが求められていくと思います。
※ブログの動画版はこちら
COP15は当然の結果だと思います。
たとえば、今後100年間に地球温暖化が直接的な原因で死亡する人は世界で何人いるでしょう。
しかし、現在、世界中で貧困が原因でどれだけの人が亡くなっているか?
****以下引用****
1)世界では毎日3~4万人の人達が、飢えが主な原因で亡くなっている。そのうち約75 %は5歳以下の子供である。
2)途上国における飢餓人口(飢えに直面している人)は5億3,200万人(途上国人口33億 人の約1/6)。そのうち3/4は女性・子供である。
3)各国のNGO(民間援助団体)などの働きにより、世界全体で見れば少しづつではある が状況は改善されつつある。一例として乳幼児死亡率は減りつつある。
しかしアフリカのみは逆に増えつつあり、後進の一途をたどっているかのように見える。
4)乳幼児死亡率の高い国は(高い順に)(ユニセフ 2000 子供白書より)
1、シエラレオネ(アフリカ)(100人中32人が5歳になるまでに亡くなっている)
2、アンゴラ(アフリカ) ( 〃 30人 〃 )
3、ニジェール(アフリカ) ( 〃 28人 〃 )
4、アフガニスタン(アジア)( 〃 26人 〃 )
5、マリ(アフリカ) ( 〃 24人 〃 )
6、リベリア(アフリカ) ( 〃 24人 〃 )
7、マラウイ(アフリカ) ( 〃 21人 〃 )
8、ソマリア(アフリカ) ( 〃 21人 〃 )
9、コンゴ(アフリカ) ( 〃 21人 〃 )
10、モザンビーク(アフリカ)( 〃 21人 〃 )
5)児童労働
今の世界に奴隷なんているの?・・・と思っていませんか?
途上国では何十万人もの子供達が1日12~16時間、休日も無く、超過酷な労働条件下で、ほ んの僅かな賃金のために働いている。そしてその多くは一生その状況より(死ぬまで)開放される 見込みが無い。
http://bsw.hp.infoseek.co.jp/ytoda_002.htm
****引用END****
先進国が今、こういう現状を改善しないで放置しているということは、貧困国からすれば、CO2規制も先進国が快適な環境を維持するのが目的で、本当に貧国を救おうとしているのではないと考えるのが当然です。
CO2取引というのは、そもそも経済的メリットをインセンティブにするという点でおかしな仕組みです。人類全てが経済的メリットを犠牲にして、地球環境を守るというのが温暖化対策の趣旨であるべきだからです。
また、日本でも政治家が毎年3万人の自殺者を放置しておいて、温暖化で犠牲になる国を救えと言っても、とても信用できないという有権者も多いと思います。
デフレ経済が自殺増加・不況の1つの要因ですが、政府は温暖化対策チームは作っても、デフレ・景気対策チームは作らない。
こういうことでは、人為的に設定されたCO2レベルがクリアできなくて、日本が発展途上国から排出権を買うというような仕組みは決して有権者から支援されるとは思えません。
貧困国支援は純粋にそれを目的として行うべきであり、CO2削減は石油・石炭・天然ガスの使用量の規制という形で行うべきです。
CO2の源の石油・石炭・天然ガスの使用量の規制を国際的に行うことなく、一般人に分かりにくい「CO2規制」という表現をもてはやす点でも偽善的な感じがします。
世界の石油会社、その出資者である欧米の大富豪や政治家、Wall Streetの関係者がCOP15の背後でうごめいていることは貧困国の代表もよく理解しているはずです。
特に、ヨーロッパ諸国はアフリカなどを植民地支配で搾取してきたことをまず謝罪してから、アフリカ諸国にCO2問題の協力を依頼すべきなのです。
オバマ大統領もインタビューで中国やインドなどの代表の激しい議論に圧倒される思いだったと述べています。
欧米の偽善的な手の内を知る国はそれなりに戦っているとみるべきでしょう。
投稿情報: 一国民 | 2009/12/25 01:03
"25%削減した場合に、どういう日本になるかということを具体的に示していく。"その通りだと思います。そしてそこまでたどり着く道筋をはっきりと示すことが民主党の責任だと思います。そこまで出来れば具体的なアクションは国民全体の責任になります。これは環境問題だけでは無く基地問題や財政問題にも言えることですが国民があまりにも受身になって(文句だけは言う)謂わば政治ゲームの観客になってしまっいる。 この様な国民意識が徐々にでも変わってくることを祈っています。
投稿情報: Y浦野 | 2009/12/25 13:59
実は私は、COP15について、いつ岡田さんがご発言になるのだろうか・・・と、ずっと待っていました。
この件については、4日の衆議院予算委員会でも、環境大臣の小沢さんを差し置いて、鳩山総理から「詳しくは外務大臣に・・・」と指名を受けて答弁に立たれるほど、地球温暖化問題について精通され、党内でも中心となって活動なさっている岡田さんなので、今回のCOP15の結果について、どういったお考えをお持ちなのか、非常に関心がありました。
今回のブログを拝読して、やはり岡田さんはスケールの大きい、視野の広い方だと改めて思いました。
京都議定書の単純延長という、日本にとっての最悪の事態は避けられたものの、何も決まらないまま閉幕したCOP15。
今後の課題は、中国やアメリカと言った、温室効果ガスの大排出国を巻き込んで、日本も更なる排出削減を目指す・・・かなりざっくりしていますが、こんなところでしょうか。
非常に難易度の高い事ではありますが、(的外れだったらすみません)
岡田さんのような、知識も発信力もある方が先頭に立ち、主軸となって取り組んでいただかないと、先は見えないような気がします。
そう考えると、外務大臣ではなく、環境大臣の岡田さんの手腕も拝見してみたかったと思いました。
(環境大臣では、岡田さんにはやや軽いポストだと思いますので、実現は無いだろうと思いますが・・・)
話は変わりますが、新しいビデオの映像は、本当に綺麗ですね。
比較すると、古いビデオでの岡田さんは、まるですりガラスの向こうにいらっしゃるかのようです。
岡田さんのお顔が鮮明に映っているのを拝見するのは嬉しいです。
最初見た時はドキドキして、ちょっとテンションが上がってしまいましたが(笑)
ビデオの中の岡田さんの背景が今までと違う・・・と思っていたら、テレビがブラウン管から薄型に変わったんですね。
どうでもいい所ばかりに目が行って・・・すみません。
投稿情報: 磯良(isora) | 2009/12/26 03:13
COP15以降の温暖化対策の見通しについて
1. COP15における政治合意
今回、OBAMA政権は、COP15にのぞむにあたり、非常に難しい立場にあったと思います。まだアメリカ国内で温暖化対策法が成立していないにもかかわらず、高い数値目標で国際合意すれば、国内保守派の反対論を勢いづかせ、今後の温暖化対策法の審議が暗礁に乗り上げる恐れがありました。他方、アメリカが低い数値目標を掲げれば、途上国の反発を生み、合意そのものが成立しない恐れがありました。
そのため、OBAMA政権は、中国、インド、ブラジル、南アフリカとの間で、世界の温暖化を摂氏2度以内に収めるとしつつも、削減目標と遵守義務を伴わない政治合意を形成し、それを他の国々が留意するという方法を選びました。
OBAMA政権は、与えられた状況の下で、最高の結果を出したと思います。ちなみに、今回合意した主要5カ国の温暖化ガス排出量は2006年当時の統計で世界全体の50%を占めます。
一方、日本は、各国の様々な利害が交錯する中、確固とした姿勢を一貫して示しました。先に鳩山首相が国際公約した25%削減を維持し、また、途上国向けの150億ドルの支援を発表しました。日本が提示した数字は、今後、先進国の間で、ひとつの基準として機能すると思います。
今後、大切なことは、岡田さんがおっしゃられているように、COP15に参加した各国が、合意内容の実質化を、国内的および国際的に、着実に進めることだと思います。
2. 国内的な温暖化対策の今後の進展
アメリカでは、この数ヶ月間、上院が医療改革法案審議に忙殺されていましたが、去る24日、同法案がついに上院で可決成立しました。これを受け、上院では、来年早々、中断していた温暖化対策法の本格審議が再開される見通しです。
世界最大の温室効果ガス排出国である中国は、先月末、環境保護のため、今後5年間にわたり、4540億ドルを支出すると発表しました。これらの資金は、再生可能エネルギー産業支援へも向けられると期待されています。
日本では、今後、ガソリン税暫定税率分を温暖化税(炭素税)へ衣替えするとともに、太陽光、風力、水力などによって発電された電力の固定価格買取制度を充実させる必要があると思います。その際、岡田さんがおっしゃられているように、環境立国としての日本の将来像を、インパクトのある形で具体的に国民に提示することが重要であると思われます。
3. 国際的な温暖化対策の今後の進展
国際的な温暖化対策の進展においては、二国間における協力、および、国際的組織や地域的組織を通じた多国間における協力が必要になると思われます。
とくに、岡田さんが指摘されているように、排出量取引の整備が重要な役割を担うと思われます。
ただ、いきなり世界的な排出量取引が開始されるというよりも、まず地域的な排出量取引が先行するかも知れません。
たとえば、アメリカでは、アメリカ西部の7つの州とカナダ4つの州との間で排出量取引市場を形成することが検討されています。[注1]
日本も、ASEANプラス3などを通じ、まず地域的な排出量取引の整備を行なうことが効果的かも知れません。
その上で、将来的に、これら地域的な排出量取引が、徐々に統合されていくことが考えられます。
国際的な排出量取引は、今後、温暖化対策の分野における、国際的な技術協力・技術移転をいっそう促進するものと思われます。
[注1] ”Bottom Line on Regional Cap-and-Trade Programs”, By Payson Schwin, Created 07/14/2009, Published on World Resources Institute
http://www.wri.org/publication/bottom-line-regional-cap-and-trade-programs
[BUSINESS LIBERALISM]
投稿情報: BUSINESS LIBERALISM | 2009/12/27 15:21
こんにちは。
今年も残すところ僅かとなりましたが、いかがお過ごしでしょうか?
毎日、お忙しい日々を送っておられることと思います。
温暖化対策は、世界中で暮らす人々の生活や将来にとって、非常に重要なことかと思いますので、是非真摯に取り組んで頂きたいと思います。
さて、今年は政権交代も実現し、心に残る1年になられたことと思います。
官僚主導から政治主導の政治に変わったことは、大変いいことだと思います。
子供手当てや暫定税率現状維持が決まりましたが、景気回復や雇用対策等もなんとかして頂きたいと思います。
普天間基地の問題は、国防や日米合意も大切だと思いますし、今の状況に至った経緯もありますので、難しい問題だとは思いますが、沖縄県民の痛みや思いを思えば、県外国外移設が望ましいと思いますが、誰もが納得のいく結論が出せるように願っています。
どうか、庶民や国民の生活や気持ちに配慮して頂きたいものと思います。
寒い日が続いておりますので、体にはくれぐれも気をつけてください。
応援しています。
投稿情報: MT | 2009/12/27 18:14
地球温暖化については懐疑論が以前からありましたが、ここにきて懐疑論が一層強まってきています。始めから無かったイラクの大量破壊兵器をなくすためにはじめたとされるイラク戦争とその結末、これは自民党が協力しました。始めから無かった地球温暖化をなくすために国民の税金を大量に使用するのが民主党なのか?
もう一度国民に対し、地球温暖化が本当に起こっているのかどうかから、科学的に議論を行なうべきだと思います。
ヨーロッパの偉い科学者たちは、本当に気候学の専門家たちなのか?気候学の専門家たちはみな今の温暖化を信じているのか?逆説は無いのか?
ちょっとインターネットを見るだけで分かる気もしますが、民主党はそのあたりをきちんと国民に説明すべきだと思います。未来のために
投稿情報: けんちゃん | 2009/12/30 12:00
一国民さんのコメントを少し読んで気がついた事がありましたので追加させて頂きます。
欧米諸国が偉そうな事言ってますが、(特にドイツ)
自国の車をエコカーにするために、他国にそれまで使っていた車を売って、それで途上国に改善を促すのはフェアでは無いです。
日本も同じでしょうけど多分
こういった車をエコカーに改善する為の技術もこれから開発してほしいと思います。
投稿情報: とおりがかり | 2010/01/01 10:52
COP15以降の温暖化対策の見通しについて
1. COP15における政治合意
今回、OBAMA政権は、COP15にのぞむにあたり、非常に難しい立場にあったと思います。まだアメリカ国内で温暖化対策法が成立していないにもかかわらず、高い数値目標で国際合意すれば、国内保守派の反対論を勢いづかせ、今後の温暖化対策法の審議が暗礁に乗り上げる恐れがありました。他方、アメリカが低い数値目標を掲げれば、途上国の反発を生み、合意そのものが成立しない恐れがありました。
そのため、OBAMA政権は、中国、インド、ブラジル、南アフリカとの間で、世界の温暖化を摂氏2度以内に収めるとしつつも、削減目標と遵守義務を伴わない政治合意を形成し、それを他の国々が留意するという方法を選びました。
OBAMA政権は、与えられた状況の下で、最高の結果を出したと思います。ちなみに、今回合意した主要5カ国の温暖化ガス排出量は2006年当時の統計で世界全体の50%を占めます。
一方、日本は、各国の様々な利害が交錯する中、確固とした姿勢を一貫して示しました。先に鳩山首相が国際公約した25%削減を維持し、また、途上国向けの150億ドルの支援を発表しました。日本が提示した数字は、今後、先進国の間で、ひとつの基準として機能すると思います。
今後、大切なことは、岡田さんがおっしゃられているように、COP15に参加した各国が、合意内容の実質化を、国内的および国際的に、着実に進めることだと思います。
2. 国内的な温暖化対策の今後の進展
アメリカでは、この数ヶ月間、上院が医療改革法案審議に忙殺されていましたが、去る24日、同法案がついに上院で可決成立しました。これを受け、上院では、来年早々、中断していた温暖化対策法の本格審議が再開される見通しです。
世界最大の温室効果ガス排出国である中国は、先月末、環境保護のため、今後5年間にわたり、4540億ドルを支出すると発表しました。これらの資金は、再生可能エネルギー産業支援へも向けられると期待されています。
日本では、今後、ガソリン税暫定税率分を温暖化税(炭素税)へ衣替えするとともに、太陽光、風力、水力などによって発電された電力の固定価格買取制度を充実させる必要があると思います。その際、岡田さんがおっしゃられているように、環境立国としての日本の将来像を、インパクトのある形で具体的に国民に提示することが重要であると思われます。
3. 国際的な温暖化対策の今後の進展
国際的な温暖化対策の進展においては、二国間における協力、および、国際的組織や地域的組織を通じた多国間における協力が必要になると思われます。
とくに、岡田さんが指摘されているように、排出量取引の整備が重要な役割を担うと思われます。
ただ、いきなり世界的な排出量取引が開始されるというよりも、まず地域的な排出量取引が先行するかも知れません。
たとえば、アメリカでは、アメリカ西部の7つの州とカナダ4つの州との間で排出量取引市場を形成することが検討されています。[注1]
日本も、ASEANプラス3などを通じ、まず地域的な排出量取引の整備を行なうことが効果的かも知れません。
その上で、将来的に、これら地域的な排出量取引が、徐々に統合されていくことが考えられます。
国際的な排出量取引は、今後、温暖化対策の分野における、国際的な技術協力・技術移転をいっそう促進するものと思われます。
[注1] ”Bottom Line on Regional Cap-and-Trade Programs”, By Payson Schwin, Created 07/14/2009, Published on World Resources Institute
http://www.wri.org/publication/bottom-line-regional-cap-and-trade-programs
投稿情報: BUSINESS LIBERALISM | 2010/01/07 00:21
岡田克也さま、スタッフの皆さま。おはようございます。
近年の気候変動に、心身がついていけなくなりました。
資源ゴミ回収、節電などを個人的に実行してます。
「ゴミ問題」を自治体に任せるのではなく、
どうか国政で取り組んで欲しい。
お願い申し上げます。かしこ
投稿情報: 井上彩 | 2010/01/17 08:27