前回お話ししたハイチの支援国会合に先立って、G8外相会合がカナダでありました。
普通ですと、G8サミット(首脳会合)が行われる1カ月くらい前に行われてきたのですが、今回は3カ月前ということで、それ自身が、かなり独立した会合になりました。
私は、実質的には初めて参加したのですが、大変興味深いものでした。
サミット参加国の外相が一堂に会して、8つの国とそれに加えてEU(欧州連合)ということで、9人の代表が1日半かけて議論を行いました。
いろいろなやり方がありますが、今回は議長国であるカナダ政府の意向があって、会場には9人の代表とプラス1人ずつということで、基本的にお役所から人が出ました。机に座っているのは18人で、周りには人はいません。そして、その18人の中で発言権があるのは、代表者9人だけでした。
1日半やりますと、私があまり親しくない外務大臣もまだいたわけですが、だいぶお互い親しくなってきました。
そういう中で、私として特に力を入れて議論をしたのが、核の問題です。
「核の役割を低減させる。そして、『核なき社会』を目指して具体的に進めていく」そういう表現は、いずれもオバマ大統領のプラハ演説(2009年4月)に出てくるわけですが、そのことを是非入れたいと思って頑張りました。
この問題だけで60分くらい議論していたと思います。しかし、なかなかそれは、他の外務大臣に受け入れられることはありませんでした。
フランスは核兵器が使われなくても、核で攻撃することを決して否定していませんし、自分自身の問題として核を減らす努力はしていますが、しかし、それは他国から言われてやることではなく、核の役割を減ずることも、基本的に考えていないということで、特にフランスのクシュネール外務大臣は、大変強硬に言われました。
フランスのクシュネール外務大臣は、1週間ほど前に日本に来ていただいてお話をさせてもらいましたが、NGOの「国境なき医師団」の創設者の1人です。
本来、NGOでずっとやってきた方ですから、彼自身の意見はおそらく少し違うはずです――私が雑談のときに、あなたの本当の考え方は違うのではないかと語りかけたときも、少し複雑な顔をしましたので、多分そうではないかと思います――。
フランスのサルコジ大統領は、フランスの国家として、ある意味では、ド・ゴール元大統領以来、国威発揚としての核という視点がどうしてもあるのではないかという感じがしました。
G8外相会合の結果の文章は、コンセンサス(全会一致)方式で、1人でも反対したら出来ないため、結局私の意見は受け入れられませんでした。
しかし、G8の中には、核保有国と核を持っていない国とがありますが、しっかりと深い議論ができたことは良かったと思います。私も、その60分の間に5、6回発言しました。他の外相とそれぞれやりあうような形になりました。
これ以上頑張ると、「初めて来た日本の外相はちょっと変わっているのではないか」という印象を持たれても困りますので、今回はそこそこのところでやむを得ないことにしました。
しかし、こういう真剣な議論を外務大臣同士が行うことは、私は非常に有用だと感じました。
それにしても、カナダでは、ホテルと会場は30分くらい離れていました。ホテルは、オタワの中心部にある非常に古いホテルでしたが、会場は、少し離れたゴルフ場のゲストハウスでした。
なぜそういったところを会場にしたのか、本当のところはわかりませんが、ただ、カナダのキャノン外務大臣の選挙区であったことは事実です。どこも同じような発想になるのかな、という感じがしないではありませんでした。
もう1つ残念だったことは、ホテルの売店でカエルの置物を探したのですが、売っていませんでした。ホテルの中に、動物のいろいろな置物を売っている売店がありましたので、そこへ行ってカエルは売っていないかと尋ねたところ、「うちは、北極圏の動物の置物を販売しているので、カエルはない」と言われました。
確かに平温動物であるカエルは、北極圏では生息できないだろうと変に納得しました。
会議中は忙しかったので、ホテルの売店しか探せなくて、カエルが見つからなかったことは残念でした。
※ブログの動画版はこちら
変わり者扱いされても、いいじゃないですか。
唯一の被爆国です。
変わってて、ある意味当然です。
核の愚かさを、真実の重みを持って語れるのは、日本だけなのですから。
ついでですが、米軍基地の徳之島移転案、心底がっかりしました。
どこも、基地を受け入れてくれない、この際出て行ってもらえまいか、と言えないものですか?
基地が全部なくなる訳じゃないんですし。
岡田さんだったら、と期待していただけに。本当にがっかりしました。
投稿情報: 恒吉宣子 | 2010/04/05 22:05
ヨーロッパには北朝鮮のような脅威や、中国の軍拡、台湾問題はありませんが、ロシアには内戦の火種が残っています。
そのロシアを入れてG8にしています。
G8に中国、インド、イスラム諸国を入れない理由は何かということ自体が大きな意味をもっています。
G7時代は米ソの冷戦下での西ヨーロッパ、北米、日本という先進国の事実上の外交同盟でした。
共産主義を捨てれば、同じヨーロッパ文化圏の一員としてロシアを仲間に入れる。
しかし、中国やインドはとてもヨーロッパ文化圏の一員とは言えない。
逆に、いかに日本が欧米から、ヨーロッパ文化もマスターした先進国だと認められているかが、感じられます。
今は、「日本はだめだ」、「日本はダメになる」という議論で稼ぐ評論家が多いようですが、G8のメンバから日本を外せるほど英米仏独露は単独で日本と科学・技術・経済・ビジネスで競って優位を示せるかと言えば、そんなことはできません。
日本は日本人が思う以上に大国ですから、インドや中国がメンバになれないG8の主要なメンバである意義をよく考えるべきでしょう。
ところで、五大湖には本当にカエルはいない? アメリカ側にはいる?
投稿情報: 一国民 | 2010/04/05 23:54
このブログを見て、さらに記者会見も読ませて頂きましたが、G8外相会合で、岡田外務大臣が火花を散らして限界まで活躍されたご様子が、とてもよく分かって、こちらも熱くなりました!
なにより、とことんやりあってくださったおかげで、G8の国の核に対する態度が可能な限りはっきりとしたのではないでしょうか。少なくとも、こうして報告をしていただくには、おかげさまでとても明快に伝わってきました。
「フランスは核兵器が使われなくても、核で攻撃することを決して否定していない」というお話を聞いて、非核三原則が身に染み込み切っている日本人としては、「それでは何故、核軍縮を目指しているつもりなのかな!?」と思ってしまいました。
その上強硬であった、というフランス外相についてのお話を聞いて、岡田さんの今回の日本不在時に「G8外相会合の核不拡散・軍縮及び原子力の平和利用に関するG8外相声明」が出されているのを外務省HPで見て、「核兵器のない世界」へ向けて、世界中が動き出しているんだなあ、、ひょっとして日本が特別な役割を果たさなくても良いくらいに、核への脅威に対する共通認識を世界が持ち出しているのかな、、と、気楽なことを考えていたのが間違いだった、、、と一瞬にして思いました。
それでも、そういう風にガンガン言ってくるということは、ガンガン返しても良い、、ということなのですから、そういう意味でハッキリしていて良いですね。
それにしても、核だとか軍事だとかいう問題は、考える時にとても疲れてしまいます。それは、殺戮という恐怖とタブー感を呼び起こすことに考えがまたがる時に、思考がそれを避けるべく停止し、しばしば考えの流れがぶつ切りになってしまうからかもしれません。
そんな疲れを癒す、「カエル変温動物事件」のお話で、真面目なお顔で困っておられる岡田さんのご様子が、とても微笑ましかったです!いつもいつも、動画での岡田さんの、こちらから見て右側に並んで鎮座して、岡田さんの援護をしているようにカメラをしっかり向いているカエルさん達を見ると、心和まされているので、ニューフェイスが増えなかったのは大変に残念でしたね、、。
投稿情報: レイ | 2010/04/06 00:21
核とカエル、どちらも大事な問題です。カエルはカビにやられてるとか生き物全てが地球規模の問題ばかりです。食料、エネルギーや領土問題についてはどうでしょうか。
投稿情報: かつみ | 2010/04/06 19:33
『核』という大きな問題について、みんなで真剣に話し合いが出来た事は、とってもすばらしい事だと思います。
最初に核を発明した人は、今のような使い方をされてどんな気持ちなんだろう・・・とたまに考えます。
ダイナマイトを作ったダイナマイト博士が発明を後悔したという話も聞いた事があります。せっかくの開発が悪い方向に使われるのは悲しい事ですね。
岡田外相の頑張り次第では、『全世界が非核』も夢ではない気がします。頑張ってください。
それにしても、カエルちゃんをお土産コーナーに置かないとは!!白クマさんとか、ペンギンさんが主役なのでしょうか?残念です。
・・・ホント残念です。涙
岡田外相がカエルちゃんを探している姿を想像して、ほのぼのしてしまいました。チャーミングですね!
投稿情報: いいちこ | 2010/04/07 14:00
核の問題について”しつこく”議論されたこと大変嬉しく思います。変わり者と思われるぎりぎりまで主張されたとのこと、今までの日本の外交上初めてなのでは無いでしょうか!フランスの厳しい反応も逆に良いニュースに思えます。国威発揚や国益の問題に極めて敏感な国ですが、理屈に拘る論理の国でもありますので、今後岡田大臣の粘りでフランスを説得されることを期待しています。何といっても議論を戦わせないと彼らの信頼は勝ち取れない。核戦争の防止は夢物語では無く極めて現実的な問題であることをフランスの賢人達が理解していないはずは無いと思います。
オバマ大統領とタッグを組んで
この目標達成にむけてご活躍されることを期待しています。有り難うございます。
投稿情報: y浦野 | 2010/04/08 10:26