はじめに
小泉政治の5年間が終わろうとしている。21世紀初頭のこの5年間は、後世どのように評価されるのだろうか。
私自身この5年間、民主党の政策調査会長、幹事長代理、幹事長、代表の職にあり、小泉政治を注意深く見てきた1人である。国会における小泉純一郎総理大臣との質疑は合計30回を数え、小泉総理と最も多く議論した政治家であることは間違いない。
国会でのやり取りは、政治家にとって真剣勝負の場である。私は、国会審議の目的は相手の失言を誘うことにあるのではなく、国民に政策選択の妥当性を判断してもらうことにあるという思いで議論してきた。小泉総理には、まともに答弁せずに逃げられたり、かわされたりすることも多かった。しかし、私自身は常に正面からの議論を挑んできたつもりである。その準備のためにも大きなエネルギーを注いだ。1時間の質疑のためには、25時間から50時間程度の時間をかけてきた。
しかし、国会でのやり取りは、そのごく一部が報道されるだけで全体が国民に伝えられることは少ない。今日は深い議論ができたと思っても、メディアの関心は別のところにあったりして、大切なことが伝えられていないと常に感じてきた。
そこで、5年間の小泉総理との国会でのやり取りと、そして私自身が当時何を考えていたかということをまとめることで、小泉政治5年間における野党第一党の責任者としての説明責任を果たしたいと考えた。したがって、これは私自身の政治理念や政策を体系的に論じたものではないことをお断りしておかなければならない。
単行本1冊にも相当する長い、そして決して読みやすいとは言えない文章だが、是非ご関心のあるテーマだけでも多くの人々に読んでいただきたい。ご関心がさらに深まった場合には、国会議事録に戻って、より正確に確認していただけると幸いである。私のホームページでは、いままでの私の国会質疑はすべて読んでいただけるようにしてある。
読んでいただいたあとの、皆様のご意見・ご感想も楽しみにしています。
わかりやすく項目分けがしてあり、その各々の内容が時間の経過とともに進行している。事実の提示と並行させてご自身の考えを表現、そして回顧の記述部分もある。終始緻密な文体で構成されていることもあり、興味深く読み進めました。
「小泉自民党」「岡田民主党」の対決構図に興味を惹かれ、政治に無関心だった国民の多くが二大政党制の誕生、そして進路を見守っていた。
この間に行われていた政治の中でも、この検証の中では特に内政の進め方についても詳細に書き起こされていて、この5年半の社会の変遷と照らし合わせながら読んだ。
例えば岡田氏が年金一元化法案にご尽力された経緯についても、効率よく話し合いをする事が如何に引き延ばされてしまったのかが明らかに書かれている。そして道路公団民営化の内実体のなさについても、その根幹部分に横たわる問題について触れられており、構造改革と経済成長との結合部分にある岡田氏の見解などという、かなり事の本質を書かれている。
そして小泉政治が突っ走った終盤、小泉氏がしまいに意固地になってかんしゃくを起こし叫びながら、解散総選挙までするはめになった小泉郵政改革。法案を見事に通し、彼は責任をもって後始末をする事なく総理を辞めた。明らかに具体策の詰が甘く、不毛に尽きるであろう矛盾だらけの「部分郵政民営化」の行く末にのこるのは、巨大な半国営化された銀行。その引受け先の外資系金融機関とは…。なるほど、国内経済にその処理能力がないのだから、可能性としてはあり得る。ここで私見だが、あの小泉氏とブッシュ大統領の異様なまでの仲の良さが思い出されてならない。極端な小泉親米外交が我々国民にもたらす結果は何なのかという事を、常に考えておかなければならない。なぜなら、郵政解散後の総選挙で国民が下した判断がそう語っているという見方が出来るからである。ただし考え方を本筋に戻すと、自国の力のみで郵政民営化が成果を収める事を私も望んでいるのは勿論である。
さて、「岡田民主党」の長期的視野にたった外交をはじめ内政においても、その主張が国民に伝わって来て支持を増やしたのは確かだ。ところが私の小泉政治への印象は、説明責任を果たす前にその都度重大事項を実行に移し、半ば事後報告的に国民に伝わってきた、という事だ。
岡田氏の「小泉政治との5年」は、「国民にとって適正な判断の選択肢を」と私たちに投げかげてくれた歳月であったと思う。そして書としてその思いを語られているのではないでしょうか。
投稿情報: 小原 | 2006/10/24 01:19