予算委員会、NHKテレビをご覧いただいた方もいらっしゃるとは思いますが、少しその話をしてみたいと思います。
私がまず申し上げたことは、サラリーマン増税しないと公約しながら、所得税の定率減税の廃止は行われた。この所得税の定率減税というのは、恒久的減税ということで、法人税の税率の引き下げとともに、経済危機の中で行われたものです。
経済が少しよくなったというのが政府の説明ですが、どうして一方で所得税の減税はやめて、そして法人税については減税のままなのか、あるいは更に今回法人税の減税を行うというふうに決めたのか。国民感情として納得できないということを申し上げました。
その上で、私は政府の「上げ潮」路線をとらえて、まず数字の根拠がないと。名目成長率が、安倍さんも経済財政諮問会議の委員として、官房長官として参加をした去年の数字が2011年は3.2%、これが1年で3.9%に急に変わったのはどういうことかと。これは根拠のない数字である。「上げ潮」ではなく「上げ底」路線であるというふうに申し上げました。
この名目成長率を高めるという中で、安倍総理が強調しているのは、二極化、格差をなくしていくということです。
このことについて私が申し上げたのは、いまの二極化というのは日本だけではなくて、10年以上前からアメリカやあるいはヨーロッパの国々でも指摘をされてきたこと。そして、最大のその理由が経済のグローバル化やあるいはIT化、そういう中で起きていることである。単に経済成長をすればそれで二極化が解決するという問題では絶対にないと。そこの基本認識が安倍総理は間違っているということを申し上げました。
ここはすれ違いのままですが、この予算委員会で最大の争点だと私は思っております。
もう一つは、名目成長率を上げることで、財政再建が容易になるかのような幻想を振り撒いているが、経済がよくなっているとされるいまこそ、歳出削減、公共事業や人件費の削減をもっとおもいきって進めていくべきだ。毎年3%ずつ公共事業を2011年までに減らしていくという約束が、参議院自民党のクレームによって1~3%に変わった。これでは、プライマリー黒字もできないわけです。そういったことについて、新しく出す「骨太の方針」の中で公共事業の削減を明確に位置付けるべきだと。こういうことを申し上げました。
そして、最後にインドの核の問題。このままでは、インドが核兵器を300発から500発ぐらい持つ核大国になりかねない。日本が、アメリカとインドの原子力協定というものに対して賛成するということは、そのインドの核大国化を容認するということであって、世界の核をめぐる状況が一変する。その引き金を安倍総理が引くことになりかねないということで、警告を発しました。
この問題はその後、社民党の阿部さんがより時間をかけて予算委員会でやってくれたところであります。非常に重要な問題です。
全体の感想としては、あまり本質的な議論は成り立たないと、そして安倍総理のいろんな認識の甘さというか表面的な理解しかできていない、そういうふうに思えてなりません。
これからも予算委員会、しっかりと議論していきたいというふうに思います。
法人税(のみ)減税に関しましては、その優遇分に関係する層の消費だけを一極的に伸ばし、結果、個人消費は置き去りになる。皮肉なことに、二極化を加速させたいのであろうかと国民の私などの目には映っております。それが今後企業の設備投資分野の伸びにも益々表れてくるという見方も後々出来ることにはならないでしょうか。(企業の健全な設備投資そのものに関して否定するはずはないのだが)。これは、法人税だけにスポットを当てた減税が、非常にバランスを欠いた経済成長を助長することになる。
または他の要因が何かあるのでしょうか?単に企業の組織票が必要だからなどという、滑稽な構図ではないことを願わずに居られません。
そして上げ潮路線の(名目成長率が高まっているのだという)一点張りで、格差是正が可能だとアピールしようとする短絡的ともとれる経済政策を目の当たりにしてしまいショックを受けました。
今の不安定なグローバル経済化の中で、一過的・部分的に成長している経済状況を、欧米に次ぐ危機的な二極化における過程なのだと捉えておられない安倍総理は、経済問題に関しては、どうも楽観的で懐古主義的な思想をお持ちなのだろうか?と、私たちを一瞬錯覚に陥らせてくれるよう、何とも陽気な展望を饒舌に語っておられたように思います。
そのような発想は、戦後すぐの重厚長大産業が右肩上がりの活況期にご活躍され、国内経済に良い思い出ばかりが多いご高齢の方々とは合うと思いますが、今の時代には即していない。
歳出削減。公共事業費削減3%→1%については、国民の大半から見ると事後報告的な印象を受けます。
そして他にも、例えば公務員人件費の削減については、削減の目標数値に併せて、具体的な手法も明確に挙げていただかなければ、現実味を帯びません。天下りコスト削減に関しては、目先の人数調整ではなしに、関係先機関や施設そのものをなくさなければ、天下り廃絶は不可能と思われます。段階的にでも、確実に削減してゆく方針が必要だと思います。
(経済面だけにとどまらず、)ご自身の描く理想像をなんとか実現なさろうとする安倍氏の昔話は個人的にやっていただいて、政治の場面では、以上に述べたような直面する課題に対し、即座に取り組んでいただきたい。
そして「上げ底路線」の底の下に居るともいえる低所得者層を度外視し、上げ底から上の部分だけを議論し、数少なくなったいわゆる以前の中間層とそれより上の層とだけを見て、二極化を定義して捉えようとする安倍氏の思考は、改められるほうが良いと思います。なぜなら、日々の経済がもたらす影響を断片的に良い部分しかすくい上げないような構造では、この国の経済活動が機能的に運営されていない事になり、ひいては日本経済を否定する事になるからです。第一、いびつな定義により乱暴に市場経済を横行させるようでは、健全な意味での経済成長は無理です。
岡田氏の質疑応答が放送されることで、経済問題への意識を、国民に対して提起して下さりありがとうございます。
投稿情報: 小原 | 2007/02/15 14:07
以下3つの例は、内容は異なりますが、不公平という根っこは同じです。
1 OECDの委員が日本の正社員(インサイダー)とパート等アウトサイダーの立場があまりに違いすぎることを指摘しています。既得権益があらゆる場所で格差を作っています。
2 あるある大事典の騒動も、番組を作っていたのはフジテレビでも関西テレビでもなく、下請けプロダクションの薄給でこき使われている人たちです。
大手テレビ局は平均1000万円以上の年収に対し、下請けプロダクションは残業代もつかず300万円程度の年収で、生きるのも難儀です。
3 30代前後のフリーターは這い上がるチャンスは現実にはほとんど皆無な一方、今年の新卒は引く手あまた。卒業時の景気次第で人生が決まってしまいます。
不公平は、もはや個人の資質や努力とは違う次元で決められています。
このような国で、生きる希望をなくしている人の潜在率は恐らく非常に高く、それゆえに少子化で、自殺者は毎年3万人を超える。
岡田氏の質問はその根っこの理不尽さに触れる契機を与えるものです。
上っ面の格差是正ではなく、生きる希望が持てる、「チャンス」が当たり前にある国を取り戻してほしいと願います。
投稿情報: kururi | 2007/02/15 18:09
13日の岡田さんの予算委員会での質問をテレビで拝見しました。
「安倍総理は、経済界の声、特に輸出関連の製造業のトップの声を聞きすぎているんじゃないですか?もっと国民の声をしっかり聞く必要があるんじゃないですか?」
という質問で、岡田さんが、この問題(所得税の定率減税廃止)について、一般庶民の思いを真剣に受け止めている事が伝わってきました。
岡田さんの「・・・特に、武部幹事長、安倍さんはそのもとで幹事長代理をしていたと思いますが、都議会議員選挙、或いは総選挙、「サラリーマン増税はしない」と、何回もその事を主張された。
しかし、総選挙が終わったら、定率減税を全部廃止するという事が決められた。
これは、どう考えても約束違反、公約違反だと思いますが、安倍さんはどう考えておられますか?」
という質問に、対する安倍総理の答弁は、
「定率減税についてはですね、これは全ての方々、自営業者の方々も当然入っておられますから、サラリーマン増税とはいえないと思います。」
と、詭弁としか解釈できないもので、正直あきれました。
全体的に安倍総理の答弁は、言い回しが婉曲的で、特に経済については、失礼ですが「あまり勉強されていないのではないか?」とも思ってしまうほど、自信が無いように感じました。
確かに、質問に答えるのは難しい事だとは思いますが、質問は事前に通告されているとの事ですし、与党側には政府側の人員も情報も集まるというのに、あの答弁では、聞いていて「この人が総理で大丈夫なのだろうか?」とかなり不安になりました。
派遣労働に関する規制緩和に関して、「・・・そういう風にして、どんどんどんどん緩めて、これ以上緩めていったら、本当に穴の開いたバケツの底になって、そして、このコストを全体抑えなければならないと、経済界は当然考えますよ。そういう中で、政治がしっかりそれを押し戻すような制度改革をしていない限り、この二極化はどんどん進んでいくとわたくしは思うんですが、いかがでしょうか。」
と安倍総理に対する岡田さんの質問の間、与党側の議員も、岡田さんの質問に同意するかのように野次を飛ばす事もせず、委員室が静かになったのが印象的でした。
今後も都合の付く限り、岡田さんが質問に立たれる時は、テレビ中継の時も、インターネット中継の時も、拝見したいと思っています。
投稿情報: 匿名 | 2007/02/20 14:32