今日は、ASEAN(東南アジア諸国連合)関係の会議についてお話ししたいと思います。
21日の朝、ベトナムのハノイに着きました。アフガニスタンのカブールからハノイというのはなかなか大変な旅でして、飛行機の便がいいものがなかったので、カブールからインドのデリーに飛び、そこからタイのバンコク、そしてハノイということで、2度乗り換えをして、しかも夜でしたから、細切れに寝ながらの旅になりました。
私もそう若くはないので、なるべくこういうことは避けないと、と改めて感じたところです。
ハノイでのASEANの会議は、私が到着した時点では、ASEANの国々が集まってすでに会議を開いていましたが、そこに、日本とASEAN、あるいは、ASEAN+3――これは、日本、中国、韓国とASEAN――など、それぞれの会議が2時間半程度開かれました。
それから、ASEANの中の、メコン川流域の国々(ベトナム、カンボジア、ミャンマー、タイ、ラオス)と日本の会議も開きました。そして、その合間を縫って、各国の外務大臣との個別会談を行いました。その中には、米国のクリントン国務長官や中国の楊潔篪(ヨウ・ケツチ)外相、パキスタンのクレーシ外相など、いろいろな方と会談をしました。
結局今回は、旅全体で15人の外務大臣と、30分から1時間くらいの外相会談を行ったことになります。したがって、こういう国際会議は、会議もさることながら、その場を利用して、非常に効率的に多くの外務大臣と意見交換ができるメリットも、改めて感じたところです。
さて、そのASEANの会議の中で特に注目を集めたのが、ARF(ASEAN地域フォーラム)です。ここでは、地域の安全保障環境について議論しました。
大きな争点、というか議論の種は2つです。1つは、やはり北朝鮮の問題。これは、日本と韓国、米国が歩調をそろえて北朝鮮を非難し、韓国は強く謝罪を求めました。他のASEANの国々も、強弱はあっても、かなり北朝鮮を非難しました。おおむね歩調は合った気がします。
北朝鮮は厳しく反発をしまして、作ってきた演説を大声で読みました。その中に、韓国が各国の協力を得て行った調査結果について、「これはでっち上げ」と発言がありましたので、私からは、「そういった考え方は受け入れられない」と申し上げました。
もう1つは、南シナ海の問題です。ここにある南沙諸島、あるいは西沙諸島の領有権をめぐって、中国、ベトナム、その他の国々がそれぞれ領有権を主張して、どうやって解決していくかについて、現状について、中国を名指しにこそしませんでしたが、ASEANの国々は懸念を表明しました。
アメリカも中国に対して、同様に懸念を表明しました。私も、「この東アジア地域は海でつながっているので、やはり、平和的に船が運航できることは非常に重要である。したがって、ASEANの国々と中国はよく話し合うべきだ」と申し上げました。
中国側からは、「これは2国間でやる話であり、それぞれの国と中国がやればいいのだ」という趣旨のかなり強い発言がありました。私からは、「そうは言っても、これは、こういうARFなどの場を通じて、一緒になって平和の海にするための議論をしていくべきだ」と申し上げました。
こういう会議もたくさんの国が出ていますので、なかなか意見のやり取りがそう活発に出来るとは限りません。ですから、どういう順番で発言していくかは、物事の展開にとって非常に重要です。
今回、韓国はかなり早めに発言しました。当事国ですから当然だと思います。ずっと他の国が発言していって、私は、中国か北朝鮮が発言したら発言をしようと思っていたのですが、最後残った4カ国で北朝鮮が発言し、次に、クリントン長官が発言し、そして、私が発言し、最後に中国の楊潔篪外相が発言する順番になりました。
しかし、楊潔篪外相の発言に、私としては若干必ずしも納得できないところがありましたので、もう一度私から多少発言をしました。
こういった会議をどのように有利に展開していくかは、なかなか難しいところがありますが、今回、ASEANの国々や韓国が懸念している問題について、日本とアメリカはそれをよくサポートできたと思っています。
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今回の岡田さんの海外出張では、時差の問題などがアメリカやアフリカなどと違って少なくて、岡田さんの正常な睡眠も十分守られるかなあ、と思っていましたが、アフガニスタンからの移動でそういう困難があったのですね、、!
せめてデリーから一本で着くことができれば、、。と、地図を見ながら思いました!
外相会談の多さには、本当にビックリしました!
それにしても、今回のそうした外相会談や会議の概要などを外務省HPで読んでみると、全体の印象がとても活発な感じで、東南アジアの国々が、日本との協力関係を非常に前向きにニコニコ歓迎してくれているような、明るい雰囲気を感じました。もっと言うと、「東アジア共同体」って、実はすぐにも実現してしまえるものなのかな??という気までしました。
ASEAN+3や、日メコン外相会議の、皆さんが手を交差させてする握手の写真を見ましたが、もうなんだか、こ、この写真を撮ってしまったら、もう絶対この先仲良くしないといけないような、微笑ましさ一杯の写真でした!
外務省のホームページ、写真がさらにカッコ良く、(可愛いらしさも!)臨場感を感じて見れるようになっていて、これもビックリしました!
HP全体もリニューアルされていて、「刻々と動き続けている日本の外交」という雰囲気がますます出ていて、生き生きして素敵ですね!
ところで、記者会見内で、岡田さんが、「外遊って言葉は好きじゃないんです、、」と言ってくださって、本当にホッとするものがありました!ゴールデンウィークの時期にも、「各大臣の外遊予定」などという言葉を新聞で見て、皆さん一生懸命働いていらっしゃるのに、5割以上まるで楽しいことでもあるかのような印象に見えるので、とても気になっていました。ましてや、「岡田外務大臣が外遊先のリゾート地で」なんて書かれてしまったら、楽しさ100%のイメージになってしまいますから、事実と真逆も甚だしいですからね!
これから、きちんと「出張」という言葉が定着してくれるといいですね。
投稿情報: レイ | 2010/07/28 23:54
1度に多くの外務大臣と意見交換出来て良かったです。時短ですね!!
でも、ブログを読む度に、岡田外相の健康が心配になってしまいます。
短い時間でも疲れをとるために、とにかく全身をギュ~っと伸ばすのが効果的です!
寝る前に、伸びしたり、首を伸ばしたり、腰を回したり。とにかく全身思い当たる筋肉を全てひっぱってから眠ってください。ちょっとは疲れがいなくなると思います。
飛行機を乗り継いでなんて、想像もつきません。電車の乗り継ぎでさえ苦痛な私には、無理です。
そんな状況で、いざ会議に出て北朝鮮の意味不明な演説を聞かされたのでは、疲れ倍増ですね。ぐったりです。
日本に帰ってきても、ゆっくり出来る時間は少ないと思いますが、リラックスタイムを作って、健康でいてくださいね。
投稿情報: いいちこ | 2010/07/29 13:21
南シナ海の問題については、二国間協議に加え、ARFにおける多国間協議の場を持つことが、きわめて重要であると思います。
二国間協議は、基本的に非公開で行なわれるため、当事国間に固有の特殊事情を反映し、しばしば議論が主観的で、対抗的なものになる可能性があると思います。
これに対し、多国間協議は、国と国とのやり取りが、他国を含めた、公の場で行なわれるため、議論がより客観的で、国際的な規準に基づいたものになる可能性が高いと思われます。
また、公の場での意見の交換は、論点を明確化するとともに、共通の利害を持つ当事国間の連携を可能にし、紛争の予防と話し合いによる解決を促す外交的効果があると思います。
岡田さんがおっしゃられているように、今後も、多数の国の利害が関わる地域的問題については、多国間協議を活用すべきと思われます。
ちなみに、南シナ海の問題は、同地域の石油・ガス権益が関わっています。これまで、世界の国々は、石油・ガス権益をめぐり対立・紛争を繰り返してきました。
長期的には、各国のエネルギー消費に占める、太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギーの比率を高め、石油に依存しない経済システムへの移行を進めていくことが、人類共通の課題であると思います。
投稿情報: BUSINESS LIBERALISM | 2010/07/30 13:21
とてもハードな旅だったようですね。お疲れ様です。
お身体、大切にしてください。
国家間の会議では、当たり前のことだと思いますが、やはり、やみくもに自分の意見を述べるのではなく、どこでどういった発言をするのかなど、いかに有利に会議を運ぶか、ということも考えなければいけないのですね。
また、当事者だけが話し合ってもいけない、といことも学びました。
意見は対立するものだから、最終的に、どの立場の国も納得できる結論が出す、というのは難しいことだろうと思います。
なんらかの形で、地域安全に対する合意が得られることを願っています。
投稿情報: もえこ | 2010/07/30 18:23
ASEANが行われたベトナムは今大変だそうですね
南シナ海に面した外房では漁業もさせて貰えないようで。
中国所有(?)の海南島は今、空母を置く基地に発展させてると聞きました。
シンガポール、マレーシア、ベトナム、フィリピン、台湾など
周りの国々は戦々恐々ですよね。
自分の身は自分で守る。と、周りの国がそれぞれ軍拡を始める中、
今回の中国の『中核的利益』は重い発言だと感じます。チベット=台湾=南シナ海(全域)の意です。
また、今現在アメリカのパートナーは韓国かもしれません・・・
北の問題も、米韓の合同演習も、今頼りになるのは確かに韓国です。
クリス・ネルソン「米中関係、にわかに緊張」
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/987
これに対し、日本は潜水艦を2隻増やしました。
たったコレだけです。
管首相(日本)から何か発言をと思ったのですが、
頑張ってるのは岡田外相だけという印象です。岡田外相からも内閣に突き上げをお願いします。
投稿情報: そば茶 | 2010/08/03 12:50