前回に引き続き、福島県に行ったときのお話をしたいと思います。
今回いろいろと視察をするなかで、線引きの問題が指摘されました。つまり、警戒区域や計画的避難区域で線引きされたわずか内側にある施設や工場などについて、例外化できないかという問題です。
例えば、南相馬市では、わずか数10メートル離れたところにある隣の工場は操業している一方で、線引きの内側にある「大内新興化学」という会社の工場は操業できないという事態になっています。
わずか数10メートルで、放射線量が著しく異なるということはなく、実際に計測しても、人体に重大な影響を与えるような状況ではありません。
ここで100人を超える人たちが働き、かなり重要な化学物質を作っておられます。働く方々はもちろん外から通われますが、工場を全部閉めるか、あるいは、稼働を認めるか。南相馬市の桜井勝延市長からは、是非認めてほしいと要請がありました。
我々は20キロ圏内ということで、原発の周辺の視察からそのまま防護服を着てお邪魔しましたが、社長や従業員の皆さんは、安全であることをアピールする意味も込めて、普通の服装で対応されました。
ここのところが一部のメディアに載って、いろいろと批判的に書かれたりしましたが、それはともかくとして、こういったわずかに警戒区域圏内に入ってしまった工場は他にもあります。
そういったところをどうしていくかは、原則はしっかり立てながら、しかし、実態を見て柔軟に政治判断していく必要もあると思った次第です。
同じような例としては、飯館村の老人ホームにも言えます。この老人ホームについては、100名を超えるご高齢の皆さんが、村が主体となった村営の老人ホームに入っておられます。
この100名を超える方を動かして、他の地域で引き取ってもらうとすると、東北にはほとんど空きがなくて、関東圏まで来なければいけません。しかも、それぞれバラバラになってしまい、環境も大きく変わってしまいます。もちろん、移動にかかる問題もあります。
そういうことを考えたときに、もちろん、放射線量の検査はきちんとするという前提で、そのまま特別養護老人ホームを現状で存続させてもらいたいというのが、菅野典雄村長の強い希望です。
1つのコミュニティのようになって運営されている、老人ホームをバラバラにすることで生じるリスクのほうが高いのではないか、ということでした。
もちろん、入居者の方の意思は尊重されなければいけませんが、そのまま残りたいという方に対して、そういった例外措置を認めていくべきではないかとも思いました。
ことは健康に関わる話ですから、しっかりとした議論が必要だと思います。そして、どちらの結論になったとしても批判は出ると思いますが、私が印象に残ったのは、村長が「いろいろな意見はあると思うが、自分の責任で決めさせてもらいたい」と言われたことです。
今回のこの福島県の視察の中で、いろいろな方にお話を伺いました。本当に精魂込めて積み上げてきたもの、例えば、飯館村は日本一美しい村を目指して、村長を筆頭に村民の皆さんが一丸となって村づくり、地域づくりをやってきましたが、それが一瞬にして全部壊れてしまいました。
あるいは、南相馬市でお会いした「前田ポーク」養豚場の経営者の方は、50年間品種改良に努められ、交配によって素晴らしい豚を育て上げてこられたのに、いまは、エサやりも十分出来ないことで、餓死する豚が出てきています。
とにかく、今回の原発も含め、震災・災害の中で、本当にいままで頑張ってきた人生ややってきたことが、もう一度ゼロに近い状態になってしまっている人々の苦しさを改めて感じました。
にもかかわらず、そういう中でもう一回やり直そうと、力強く立ち上がっている人々の思いや気持ち、それをしっかりと受け止めて、政治は間違いない決断、判断をしていかなければいけないと改めて感じたところです。
※ブログの動画版はこちら
放射能汚染という偏に科学的で客観的な判断を要する場面において政治的な配慮を模索することは問題解決の道筋を混乱させるだけかと思います。
大局的なデータの分析を元に、公正・安全なな基準を設定するにあたって個別の現地の実情を過度に斟酌しては本末転倒となる恐れがありそうです。
投稿情報: HY | 2011/05/13 11:47
岡田さんのおっしゃるように、住人の方々の積み上げてきた大事なものをできる限り守る為に、柔軟な対応と決断がなされることを、お祈りしています、、難しいでしょうが、どうぞよろしくお願いいたします、、。
やはり、こうして岡田さんが現地に向かわれて、丁寧にお話をお聞きになる、、、ということは、ものすごく意味のあることですね、、。岡田さんならば、皆さんの現状をしっかりと最大限に把握してくださるという、信頼感がありますから、、。
何か色々言う人たちは、こうして行動力で最前線に向かわれることのできる方への、素朴な羨望と、、あとは自分がそれをできないことへの、情けなさもあると思うので、、それも被災した方々へのその人たちなりの何らかの思いと受け止めて差し上げるしかないですね!
投稿情報: レイ | 2011/05/13 12:03
テレビや新聞で「動物救出」にやっと動いて下さっている事を拝見しました。
しかしながら、見ていてとてももどかしいです。
震災からもう2ヶ月が経っています。
一刻を争う命なのに、一時帰宅の順番を待っていたら、
今日救えたかもしれない命が、日が経つ事に消えていきます・・・
せめて、一時帰宅するまでの間、定期的に給水・給餌を行って下さいませんか。
また、飼い主からの保護要請が無い動物達もお救い下さい。
それには、今の体制では人数が足りないと思います。
どうか、民間の専門(保護団体・獣医師)の方の立入を許可して頂けませんか。
残された動物、全てを助け出して欲しいと切に願います。
助けられなかった思い、見捨ててしまった思いは本当に残るんです。
人間の中に 動物の中にも・・・
その思いを一生、 人間は苦しみや悲しみとして背負い続けます。
どうか、飼い主さん・動物達の為に命を繋いでください。
これ以上、被災された方々・動物達に苦しみを与えないで欲しいです。
よろしくお願い致します。
投稿情報: 東 | 2011/05/13 16:49
岡田さんはどうか国民が希望を持てるときめきを感じさせる発言を御願いします。
投稿情報: 佐々木 | 2011/05/16 15:09
防護服はまるで減量スーツのようで、脱いだ後に汗が絞れそうですね。ハードスケジュールの中であの服装をなさって、熱中症は大丈夫でしたか?
南相馬市の化学工場の皆さんも、近所の目があって防護服は着づらいのでしょうが、せめてマスクとゴーグルぐらいは着けた方が良いと思います。
飯館村の特養老人ホームで働く職員の中にも、逃げたいのに逃げられない人たちが大勢いるような気がします。例えば「みんなが残ってるのに、1人だけ逃げるのは許されない」とか、マスクをすると「あいつは自分だけ助かろうとしてる」とか、(都会では少ない)強烈な周囲の圧力が感じられます。「自分の責任で決めさせてもらいたい」と発言した村長さんは、威勢良くタンカを切ると同時に、その責任の取り方とやらを具体的に示してほしかったです。失礼ながら、ホームの役員の肩書きでもお持ちなのかと勘繰ってしまいました。
また、ブログを拝見して、視察というものには、カウンセリングも含まれていると感じました。心理学関係で働く友人いわく、カウンセラーは「相手を甘やかさず、適度に距離をとって、冷静に話(本音)を聞き出す」のだそうです。岡田さんを見ていると、プロのカウンセラーに通じるものがあると思いました。
投稿情報: 淳子 | 2011/05/16 22:48
菅総理は福島県を自然エネルギー普及の拠点にするそうです。
これは、風力、太陽光の発電所を福島県に作るということでしょうか。
そして、これまでどおり福島県で作ったエネルギーを関東地方に送れということでしょうか。
さらに、もし事故が起こったら、また福島県だけが大きな被害を受ければよいということでしょうか。
総理の真意がわかりません。
私は関東地方で使う電力が不足しているということであれば、関東地方に発電所を作るのが一番良いと思います。
投稿情報: | 2011/05/17 18:37