今週、中国・北京と韓国・釜山の両都市を訪れてきました。
北京のほうは、日本の「言論NPO」と中国のマスコミが共催する「第3回北京-東京フォーラム」に出席しました。
この会は3年前、日中関係が非常に緊張した折に、そういう中で政府以外のルートで率直に話し合いをする場が必要だということで始まったものです。
そこで私はまず、15分ほど基調演説をさせていただきました。その概要は言論NPOのホームページにも出ていると思いますので、ご覧いただきたいと思います。
そのあと、非常に楽しかったのは、北京大学で150名ほどの学生と、これは北京大学以外の学生さんも多かったのですが、話ができたことです。
少し残念だったのは、日本側が5名、中国側も5名、合計10名の人間が学生たちと話し合いをしたということで、やや散漫になった嫌いは免れません。
しかし、学生の皆さんはなかなか鋭い質問で、非常に議論を楽しむことができました。
私は少し挑発しようという意図もあって、申し上げたことは、1つは中国の若者の間に排他的なナショナリズムが高まっているのではないかということです。
これは日本もそういう傾向がありますが、そういった排他的なナショナリズムというものに対して同じ世代として学生の皆さんはどう思うかという問題を投げかけました。
2番目が戦後の日本が歩んできた歴史について、どう評価しているのかということです。
つまり、民主主義あるいは平和、そして近隣の国々に対して経済援助を行ってアジアの今日を築くのにも貢献してきた。中国に対しても天安門事件の直後に経済協力を真っ先に再開し、WTO加盟においては中国に対して最もその手助けをした、それが日本であると。そういうことについて若い人はどう考えているのかということを質問しました。
そして、3番目に私が申し上げたことは格差の問題。日本の政治においても格差の問題は大きなテーマですが、中国における格差、都市と地方、都市の中でも地方から来た人たちと都市に元々住む人たちの間の格差、こういうことについてどう考えているのかと、やや挑発的でしたが、こういう問題提起をしまして、そういうことも含めて、活発な意見交換ができたことは非常に楽しかったわけです。
こういう若い人たちとの議論というのは、これからも続けていきたいと思っています。
韓国のほうは「日韓フォーラム」、これは日韓の有識者が10数年毎年開いて議論しているもので、去年は日本の淡路島で行われました。そして、今年は韓国の釜山で開催されたわけです。
私はわずか1日という滞在でしたが、最近の韓国の状況、昨年の淡路島での議論では韓国側がAチームとBチームとに分かれてお互いが議論するという非常に面白い現象だったのですが、今年は韓国側も少し静かになって、議論をいたしました。
ちょっと気になるのは、日本に対する関心そのものが薄れているのではないかと。アメリカとの間にFTA(自由貿易協定)を結び、いまやEUとも結ぼうとしています。日本との間は、その協定の締結に向けた議論がいま停滞している状況にあります。
韓国の人たちの関心は、アメリカや中国のほうに行って、日本から薄らいでいるのかなという気がしないでもありませんでした。
この中国・韓国の旅で1つ気付いたことは、円がすごく安くなっているなということです。特にウォンに対して非常に安くなっていて、帰りは釜山からソウルに飛んで、ソウルから羽田に最終便で戻ってきたのですが、韓国の若い人たちが乗客の大半を占めていました。週末で日本に遊びに来るという感じです。
一昔前は日本の女性たちが韓国に週末エステに行ったりした時期もありましたが、いまはウォン高で逆転現象になっている。
そしてもう1つは、羽田に着いて出口を出ようとすると、日本の女性が――中年の女性が多かったのですが――100名から150名くらいが詰めかけているのです。韓国の俳優が来日するということで、集まっておられたようです。ちょっと違和感を覚えたわけです。
いずれにしても、韓国の俳優の人気というのは、すごいものだなと改めて感じました。
中国で思い出すのは、この間大使を退任し外務次官になられた、王氏のことです。朝日のシンポジゥウムでお話されたのが印象に残っています。とても、日本語堪能でお話の上手な方、可愛げがあるといいますか、ユーモアがありチャーミングなのです。したたかなのですが、好感が持てるというそんな印象を持ちました。そして、ユーモアを交えていうべきことは、きちんといいます。2枚目より、可愛げが人生では大事と思う私にとっては、最大の褒め言葉です。日本の外務省もあのぐらいのレベルの外交官を育成してほしいと思います。「米国に血を流せって言われた」といっていた子供の使いのような外交官ではなくて。
岡田さんが中国の学生さんに質問されたことは、私も興味があったことです。どのような答えが返ってきたのか、ブログにはお書きになっていないのが残念です。
戦後60年の日本の平和憲法による歩みを理解してほしいところです。ですから、岡田さんが中国でおっしゃったことは、よくぞ言ってくださいましたと思いました。
日本国民は戦前は、旧日本軍の言論締め付けと教育による洗脳で痛めつけられ、戦後は世界から戦争責任を問われる立場にありました。私にはそのような歴史観からくる戦争アレルギーのトラウマがあります。安倍居座り内閣と自民党が、威勢のよいことを言っていますが、自分達は安全なところにいて、国民に血を流せを要求する軽蔑すべき人達だと思います。血を流すのは、いつも一般国民。国家総動員法を作った岸氏だって、生き残り戦後総理になり、孫は、今居座り内閣を作っています。戦争で、一家死に絶えた家もあると聞くのに、優雅なことです。
戦争はいけません。得をするのは、政治家、死に絶えるのは、国民です。
投稿情報: 地球人 | 2007/09/01 11:11
中国の‘大人’の風格ある岡田さんと中国の学生が論を交わすのは有意義なことと思いました。時代の変化の時にはきっと実を結ばれることと感謝します。
同じく中東に行かれたらいいでしょうね。おおらかな日本の政治家は久しく表舞台にいなかったので、民主党が政権を握れば世界の一隅を照らす気がいたします。
投稿情報: 榛名 | 2007/09/03 00:33
言論NPOのレポート、なかなか読み応えがあるのでゆっくりと読ませていただいております。
10年前、東南アジア危機直後にワシントンDCで開催された「経済戦略会議」に出席したのですが、その際、駐米中国大使が「自国の金融・保険市場はまだ発展の序盤にあり、とても欧米の資本を受け入れられる体制ではない。これからゆっくりと成熟させていきたいので、見守ってほしい」と、ユーモアを交えつつはっきりと牽制し、私は中国の政治家の凄さを実感しました。
中国の政治家・国民は日本の政治家・国民に比べて、したたかで欧米社会に対しても物怖じせず、悪く言えば厚かましいくらいの印象があります。
そのような中国と今後、どのようにつきあっていくのか、日本の政治家の手腕が問われるところだと思います。
岡田さんには、今回のように中国の様々な人達との交流の機会を積極的に持っていただき、今後の政策に活かしていただけることを期待しています。
投稿情報: おこあん | 2007/09/05 11:39