今日は、中国における日本人の死刑執行ついて、少しお話をしたいと思います。非常に残念なことであるとまず申し上げなければなりません。
すでに1人の方が死刑執行され、残り3人についても近々死刑執行するという通知が、外交ルートを通じて来ています。
私もそのことに関して、先般、程永華(テイ・エイカ)駐日中国大使に外務省に来てもらい、懸念を表明しました。
その「懸念」というのは若干説明が要ると思います。
どういう犯罪者についてどういう刑を執行するかについては、それぞれの国が決めていることです。そして、中国における麻薬取引については、非常に厳しく、死刑になるケースが多いということです。
したがって、そのこと自体について、日本国政府として中国政府であれ他の政府であれ、何か言うということは、控えなければならないことだと思います。
ただ、1人の方に死刑執行され、残り3人についても近々死刑執行されることになれば、それは、国民感情としてやはり違和感を覚えることになるので、そういう国民感情に悪い影響を及ぼすという意味で、懸念を表明しました。
外務省としても、この4名の方が裁判にかかり、死刑判決を受けるという過程において、領事面会を繰り返すなど様々な努力は重ねて参りました。
ただ、先ほど申し上げたとおり、裁判手続そのものに関与するということにはなりません。そういう中で、4名の方が死刑判決を受け、1人が死刑執行されたわけです。
よく似たケースで、イギリス人が死刑判決を受け、そして死刑が執行されました。このことについては、ブラウン首相はかなり非難しました。ただ、イギリスは死刑そのものを認めていませんので、そういう背景の違いがあります。
そしてもう1つは、精神状態が不安定で、責任能力がないということを批判の根拠にしていました。そういうところが、今回の日本のケースとは違います。
こういった犯罪はますます国際化が進みます。実は日本も中国人に対して、1名ですが、死刑を執行したことが、そう遠くない過去においてありました。
私が申し上げなければならないことは、この麻薬取引というのは、もちろん日本でも最高で無期懲役ということですが、アジアの国々においては死刑ということがかなり多いわけです。
これは中国だけではなくて、シンガポールやその他結構多くの国において、最高刑は死刑になっています。そういうことを十分踏まえて、麻薬取引にはもちろん手を出すまいということが強く求められると思います。
いずれにしても、この問題は理性的に対応しなければいけない問題だと思います。非常に難しい問題であり、感情の問題があることを認識しつつ、しかし、理性的に対応しなければいけないことを、国民の皆さんには申し上げておきたいと思います。
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私はこの問題に対してどうしても感情的になれません。
麻薬の運び屋は、中国国内で麻薬を所持して逮捕された場合、死刑判決を含む重い罰がくだることを知っていただろうと思うからです。
虎穴に入らずんば虎児を得ず、と犯罪に加担し中国に渡った者たちを、私は同じ日本人だから、あるいは、量刑が日本人の感覚としては重すぎるから、という感情論で、同情する気持ちになれないのです。
同じ理由で、たとえ彼らが犯罪組織に直接関わりのない人たちであったとしても、感情的になって彼らの死刑に反対したいという強い欲求が沸き起こってこないのです。
ですが、一つだけ、どうにかならないのかと思っていることがあります。例えば多額の負債を背負ってしまってどうにも身動きがとれず、犯罪組織の脅しに負けてしまった者、あるいは、ホームレスの境遇に落ち込み、目先の金銭を目当に半ば自暴自棄となって中国行きの飛行機に乗ってしまった者、そういった人たちがもしいるのなら、このような結果になってしまう前にどこかの時点で国家が、犯罪の予防、阻止を行えないのだろうかと思うのです。
この一点だけ、考えていると、どうにも釈然としない気持ちになるのです。
日本人としての感情論や立場上の定見ではない、なんらかの効果的な防止策をとっていただきたいと思っています。
コメントとしては不適格かもしれませんが、私の思ったことを率直に書かせていただきました。
投稿情報: 稲荷 | 2010/04/09 02:20
岡田克也さま、スタッフの皆さま。こんにちは。お疲れ様です。
中国での出来事、驚きました。せめて結果に至る詳細を知りたかった。
その反面で、どこかに諦念を知る自分もいました。
「ミッドナイトエクスプレス」という映画があります(実話を元にしています)。
この映画を思い出された方は多いのではないでしょうか。
それぞれの文化や政治の背景。そこから生じるギャップ。知らぬ間に狭間に陥る恐怖。
それらが余すことなく描かれています。
イギリスの名匠アラン・パーカー監督の1978年の作品です。再度、この映画を見てみようと思います。かしこ
投稿情報: 井上彩 | 2010/04/09 06:24
アメリカで日本人がこういう形で処刑されることは考えられません。
資本主義国のアメリカでは、麻薬所持で死刑などありえません。
人民の国、社会主義の国、共産党が理想を掲げて独裁体制を維持する中国では、麻薬所持だけでなく、政府に対する批判・抗議も死刑の対象にされる可能性があります。
問題は「自由」と「民主主義」に対する考え方です。
自由のない民主主義というものは、独裁・恐怖体制でも表面的には実現するものです。この体制を維持するには死刑を効果的に実施することが必要になります。
それだけ、自由のない民主主義は人間性に反した体制です。
それゆえに飛躍できない国が、不振の理由をアメリカ資本主義のせいにして多くの人々を反米にしてきました。
しかし、中国も資本主義のパワーを取り入れるために経済的な自由は相当許容しています。
これを、政治的な自由にまで拡大させるのが日本の使命です。
また、麻薬所持については、知らないうちに運び屋にされている例もありますから、慎重な取り扱いが国際的に必要とされています。
日本は中国と共同で、東アジア麻薬犯共同司法裁判所を創設すべきでしょう。
いずれにしても、中国には余り気安く行くべきではないと思います。
日本やアメリカのような自由な国になるまでは・・・
投稿情報: 一国民 | 2010/04/09 13:20
死刑になるのも仕方ないと私は思います。
人の命は尊く大切なものですが、罪を犯してしまった以上、その国のやり方で償うしかないです。中国でそういうことをしたら、どうなるかくらい本人も分かっていたと思います。もちろん、だからといって罪の軽い国で麻薬を売る事だって許されませんが。
麻薬はそのくらい重い刑にしないとなくならないくらい、依存力が強いし、使った人だけでなく、全く無関係な周りの人にまで害が及ぶ危険性もあります。
「売っても買っても命はない」くらい言わないと、密売人も使用者も減らないと思います。
芸能界にも薬物依存者が増えているし日本も考えなければならない時期だと思います。
「日本なら刑が軽いから」なんて、密売に利用されるようになってしまってからでは遅いですから。
投稿情報: いいちこ | 2010/04/09 13:28
中国が国際的に重要な地位を占めようとしている現在、何事の価値判断も、先進国に受け入れられるものでなくてはならないし、日本もそれを要求していくべきです。今回の死刑は、多くの日本人が違和感を持ったのは事実です。民主主義と同様、国際的な基準から乖離があれば、改善を求めていくのは当然です。外務大臣としても、意思表示を積極的にすべきです。
投稿情報: 前嶋 | 2010/04/10 01:02
この件は、日本人の無知または、常識の無さに由来しているように思います。
中国に4年程駐在していましたが、麻薬の所持は厳罰というのは、常識です。
と言うより、海外での犯罪行為はたとえ些細なことでも、警察沙汰になると、個人では手に負えないと肝に銘じるべきです。
死刑になった(なる)方々には気の毒ですが、自分の常識の無で、命で罪を償わざるを得なくなった今回の事件から、日本人である私たちは、よく学ばなければならないと思います。
投稿情報: なに言うとりまんねん! | 2010/04/10 10:39
中華人民共和国が普遍的な意味での「国家」とは少し違うのではないか?、と思うのは私一人ではないでしょう。 まず、「共産党ありき」の国柄であり、共産党独裁体制が絶対でその保護、維持のためには「なんでもあり」の行動を躊躇なく決行する国家であります。欧米先進国に比肩する実力を持ちながら文化大革命という蛮行を正当化し続けてきてもいます。このような体制を堅持している国家に対してはたしてどのあたりまで「人権」に対する配慮を期待できるのかは多くを語らずとも明らかであります。 とはいえ、今回の件はたしかに中華人民共和国内の問題ではあるので表立った非難はできません。 私が残念に思うのは日本、欧米先進諸国が「人権」の一点において集結し、中国政府に対して「無言の圧力」を醸成するような行動、取組みができないのかということです。
投稿情報: 北野 青志 | 2010/04/10 16:06
海外に行く際に、「犯罪の被害者にならないように」と気をつけることはあっても、「自分が海外で犯罪者になる」ことがどんな結果を招くか、という問題については、あまり一般的に考えないことだと思います。
考えたとしても、ここまで自分の国籍が判決に影響を与えない、、、ということまでは思い至らないと思います。
自分の国籍が影響を与える、というのは、法律の違う外国人だから特別扱いされる、というのではなく、今回の場合「日本では麻薬取引は殺人罪になどならない犯罪であるので、殺人罪になる可能性を完全に知っている中国人とはまるで意識のレベルが違うままに行われた犯罪である」ということが配慮されるということです。
「その国での罪の重さと刑の執行の実行割合の大きさを知らない」という可能性が大であるということは、十分に酌量の余地があるように思われるのですが、どうでしょう、、。
そう考えると、まず裁判における基準のようなものからして、日本と違うのかな、と感じられてしまいました。
しかも、傷害罪や窃盗と違って、直接特定の個人に被害を及ぼしていないという点で、この刑の執行は、「中国国内で麻薬犯罪を取り締まる為のもの」の意味が強く感じられるので、そうなってくると、日本人がそこで刑を執行されることは、日本ではそうした趣旨によるそのような刑は行っていないので、「他国の政策に、別の国の一個人が唐突に巻き込まれてしまっている様相もあると言えるのでは」という気がし、宙に浮いた感じは拭い去れません。
ここまで法律と死刑に対する考え方が違い、それに対して日本人があまり知らなかったり、対策が取れていなかった、ということが問題だと思います。
現時点では、そうした対応が間に合わず、他国の既にある法律という壁は分厚すぎ、本当に手のうちようがなかったのが残念です。
今回の件で、もう誰一人麻薬になど手を染めないようになってくれれば一番良いのですが、麻薬取引以外にも、日本ではあり得ない判決もあるのかも、、と不安になってしまいます。
中国に対して、特別な悪い感情を新たに持とうとはしていませんが、「ひょっとして、普通に中国を旅行していたら、自分のバッグに、誰かが麻薬を押し込んで逃げて行ったらどうしよう?裁判にかけられるなんてことになったら??」という実際的心配は持ってしまいました。
今までも、そんなことが起きたことは聞いたことがないので、大丈夫だろうとは思うので、バカなことを言って申し訳ありませんが、やっぱり今回のことは、日本とはあまりにも違うことばかりだったので、ビックリして、普通にショックでかなり怖いことでした、、。
投稿情報: レイ | 2010/04/11 23:14
この中国における日本人の死刑執行に関しては幾つかの考えが同時に自分の中にある事に気が付きました、具体的な事はともかくまず感じたのは何方かもおっしゃっていますが、死刑になってしまった方は中国の法律を破りつかまったので、それで中国で裁かれるのは仕方が無いのでは、と、ある意味客観的に他人事の様に思ってしまったわけですが、この自分が持った考えにちょっと自分自身で怖いと思いました。
なぜなら自分の事として捕らえなかった自分に気が付いたのですが、つまり今世の中で起きている様々な重要な事柄に関して人々は関心が薄く、或いは無責任化している事に憂いを覚えていたのに、実は自分も同じような部類の人間だったのか?という事に気が付いたからです。
まず怖い事は、私は海外に時々行く事があります、確率はかなり低いとしても自分の意志の有無に関係なく犯罪に巻き込まれる事はあり得ます、今回のケースでは麻薬の運び屋ですが、その運び屋にされてしまうという事は確率はかなり低いとしてもまったく在り得ない事ではなのではないか、という事です。
海外で暮らした経験があるので日本の常識は通じないというのは理解していても事故の様な事(冤罪を含め不本意で犯罪者になってしまう)で万が一死刑等になってしまうとしたらそれは悔やんでも悔やみきれません。
今はたまたま菅谷さんの冤罪事件が取り上げられていますから関心が高まっていますが、これまでは有罪判決を受けて死刑になった人は重大な犯罪者なんだから(冤罪かどうか等考えず)ある意味仕方ないと思考停止になっていた部分がありました。
状況は違いますが同じような感情を思い起こさせる事件があります、イラクで殺されてしまった日本の若者がいた事を覚えている方は多いでしょう、そしてどれだけの人がこの若者に同情したでしょうか?自業自得だ、と思った人は多くなかったでしょうか?
要は彼の無知等があの悲劇を生みましたが、翻って私達はどれだけ賢いといえるでしょうか?他人事と簡単に処理してしまう前に考える必要があるのではと感じました。
投稿情報: 松崎としお | 2010/04/14 00:47