今日は、先週行われた日中韓外相会議についてお話ししたいと思います。今週は大変忙しかったので、ご報告が少し遅れてしまいましたことを申し訳なく思います。
この会議は、日本と中国と韓国の外務大臣が集まって、年に1回行うことになっています。そして、この2週間後――正確には今月末ですが――今度は日中韓の首脳が集まって会議を持ちます。
こういった形で2年前から行われて、定着してきました。もちろん3カ国で議論するだけではなくて、その合間を利用してバイ(1対1)でもやります。ですから、日中韓の外相会議はやりましたが、同時にその前後に日中外相会談、日韓外相会談、そして、もちろん韓中外相会談が行われています。
今回の会談でも様々な議論をしました。日韓の間の主要テーマは、韓国哨戒艇が沈没したことに関する調査の状況と今後の対応についてで、これが最大の問題でした。
しかし、それだけではなくて、日韓間を取り巻く様々な問題、例えば、今年は日韓併合100年という非常にセンシティブな年です。それにどう対応していくか、そして未来志向で何をやっていくか。あるいは、現実の問題としての竹島の問題などについて、率直に意見を交わしました。
日中間では、より盛りだくさんに議論することがありました。例えば、最近の中国海軍をめぐる動き、東シナ海の開発、ギョーザと食の安全、そして、核の問題。そういったことについて、様々な議論をしました。中国側は2週間後の首脳会談を控えて、粗ごなし的な議論を行いたいということで、具体的な提案もいろいろありました。
私としては、そのことも重要だけれども、しかし、やはりあまり首脳間でギリギリと詰めた議論は行う時間もありませんし、首脳間は未来志向で、外に対する発信を重視するべきだと私は考えていますので、いろいろな日中両国にまたがる提案事項については、外相レベルでしっかりと解決をしていく、解決の方向を見出していくべきだと考えて、今回様々な議論を行ったわけです。
もちろん、まだお互い意見が違う部分については、自らの正当性を主張し、そして、中国側に対して、こういうものは訂正してもらいたいと言うだけではなくて、今後同じことが再発しないためにはどうしたら良いかと、そういう視点も含めて議論を行いました。
例えば、東シナ海の開発については、首脳間ではすでに同意があります。しかし、長い間課長レベルで堂々めぐりの議論が続き、ようやく局長レベルに格上げされました。しかし、単に局長レベルになったと喜ぶのではなくて、そこで実質的な議論が行われなければなりません。首脳間の合意があるわけですから、その合意を前提にしっかりと議論を行うべきだと、そういったことについて提案させていただきました。
日中間の海域をめぐる問題は、まずその根底にあるのは、お互いの認識の違いです。日本は日中の中間線を日本側の「排他的経済水域」として中間線を考えるべきだと主張しているわけですが、中国側は大陸棚が延長している部分については、これは中国の大陸棚であるということで、基本的に認識が違います。この問題を解決するのは容易でありませんし、私は、これは国際司法裁判所などで最終的に判断してもらうことを目指すべきだと思いますが、そう簡単には解決しない。
そういう前提のもとで、いま、無用なトラブルが起きないためにはどうしたら良いかということを、しっかりと議論するべきだと思っています。
例えば、中国のヘリコプターが自衛隊の船に非常近いところまでやってきまして、少し間違えば大きな事故になりかねないという状況が出てきました。我々は、これは危険な行為であるといって批判するわけですが、中国側からすれば、その前に中国海軍に行った演習について対して、自衛隊がしつこくつけ回しをして、それこそ危険な行為だったと言うわけです。ここは主張が分かれるわけです。
そういったことについて、再発しないために、これからどのように考えたらいいのかということが非常に重要なテーマです。お互い批判することも必要ですが、例えば、お互い現場で交信するためにどうしたら良いかと、自衛隊とか軍の間のホットラインをつくるということについてどう考えるか。そういったことについてもなかなか議論は進んでいませんので、そういった議論を早急に行って、そして、万が一という事態に備えるべきだということを議論したわけです。
核の問題も議論しました。私からは、5つの常任理事国はそれぞれ核を持っているわけですが、米露は米露間の合意で戦略核を減らすということになりました。イギリスやフランスも自ら持っている核は減らしています。そういう中で、中国は核を増やしているではないかと、これを減らす、少なくても現状維持をしてもらいたいと申し上げました。
かなり率直にいろいろな意見交換をしました。その過程で、私自身は冷静にお話をさせていただいたつもりですが、中国側からは「日本の外務大臣の対応は事実でないことを語った」という批判がなされました。
私は様々な目の前にある問題に、お互い率直にそして冷静に語り合い、1つひとつ取り除いて解決していくことが、本当の意味で日中関係をより確かなものにしていくと確信しています。
官僚主義になって、様々な目の前にある問題を先送りするのではなくて、それぞれがリスクを取りながら、しっかり解決していくという私の信念は変わりませんので、これからも中国に限らず、いろいろな国と率直に話をしていきたいと思います。
それが場合によっては嫌がれるかもしれませんが、しかし、それが外務大臣としての務めです。岡田克也という外務大臣が「いた」ということではなくて、岡田外務大臣がこういうこと「した」と、後世語られるような、そんな外務大臣でいたいと思っています。
※ブログの動画版はこちら
東シナ海ガス油田問題について、お伝えさせてください。
私は、かねてより、東シナ海ガス油田問題は、日中間の利害が対立する懸案ではなく、むしろ日中間の友好関係を発展させ、国際的にも有意義なメッセージを伝える大きなチャンスだと思ってきました。
日本の産業界は、今、ものすごいスピードで、環境関連技術の開発に突き進んでいます。太陽光発電、風力発電分野に大手の企業が次々と投資し、新しい工場を各地に新設しています。また、ハイブリッドカー・電気自動車分野でも、自動車メーカーはもちろん、電機メーカー、素材メーカーがめざましい技術開発を進めています。今、彼らが何よりも必要としているのは、市場です。
他方、中国は、いまだに環境技術の分野では新興国です。中国政府は、再生可能エネルギーと電気自動車の導入を進めようとしていますが、まだ時間がかかります。その間、中国は、経済成長を続けるために、多くの石油・天然ガスを必要とします。
そのため、私は、日本政府と中国政府との間で、外交的に取引を成立させ、東シナ海ガス油田の権益については、日本が中国側に大幅に譲歩する一方、再生可能エネルギー産業、ハイブリッドカー・電気自動車産業については、中国が日本に市場を開放し、政府レベル・民間レベルの技術協力および共同開発においても、日本に優先的な扱いを与えるとすることが、両国にとって、もっとも好ましいと考えてきました。
この取引を成立させることによって、日本は、再生可能エネルギー産業、ハイブリッドカー・電気自動車産業という、21世紀の戦略的成長産業において、中国という巨大市場に基盤を築くことが可能となります。
また、それは同時に、炭素エネルギーの時代が終わり、再生可能エネルギーの時代が始まりつつあるという強力なメッセージを世界に伝えることを意味します。
他方、中国は、日本にたいへんに感謝するでしょう。それは、今後、20年、50年の日中関係にとって大きな意義を持つことになります。また、中国の経済成長が続くことは、日本の経済にとってもプラスとなります。
タテ割り行政と前任者の決定に縛られる官僚では、この決断は不可能です。国民に直接責任を負う政治家が、大きな決断をする必要があります。また、保守派は、引き続き古い地政学的発想に基づく国益論を唱え、日中間の対立を煽ろうとするでしょう。
長年民主党地球温暖化対策本部長として温暖化対策を進められてきた、岡田外務大臣におかれましては、国民に対する説明責任を尽くした上で、この大きなチャンスをぜひ活かしていただきたいと思っています。
投稿情報: BUSINESS LIBERALISM | 2010/05/22 20:21
まあ、外交も国の歴史の一部です。
やはり、過去との整合性、国民の一般的な歴史観を踏まえて、党派の利害や戦略に拘泥せずに、いわゆる常識的な取り組みを積み重ねていくべきでしょう。
ただ、中華主義から言えば、中国が一番、韓国が二番、日本が三番という思想もありますから、中国や韓国を正しい方向に導くのは容易ではないでしょう。
鳩山首相も小沢幹事長も中国人の本音を理解していないように見えます。今の中国は田中首相や竹下首相の時代の中国ではない。
特にアメリカが中国市場に目をくらまされていますから、ここでも問題が生じる。
米国市場と中国市場に恵まれた日本の将来は本来、明るいはずです。積極外交が基本でしょう。
投稿情報: 一国民 | 2010/05/22 23:49
中国海軍の、ここ最近の動きは、立て続けですし、タイミング的にも「ギクッ!」とするようなことだったせいもあり、岡田外務大臣がはっきり抗議されたことを、とても嬉しく思っていました。それで、中国側の軍の勝手な判断だったのかな、、、という可能性も考えていて、中国の外務大臣などは、「そうですね、注意します」とおっしゃるかな、、と思っていたのに、違ったので、「あれれ!」と思いました。本気で「正常の訓練だった」とおっしゃっているようなので、本当にそういう風な認識なのだな、、と思いました。逆にそれゆえに減る不穏さはありますが、やはり、ではその日本側が危険を感じる行為は何故行われたのか、、という不可解さは残ります。
それで、ふとちょっと思ったのですが、冗談みたいで申し訳ありませんが、中国のヘリコプターが近づきすぎた件などは、「ただの距離感の違い」だったりしないものでしょうか、、。中国の人と、日本の人の距離感は違うと聞いたことがあるので、、。(話す時などの接近距離に、思わず「ち、近い!」と思ってしまう日本人も多いそうなので、、)
・・違いますかね、、。
東シナ海油田問題ですが、「国連海洋法条約」の「第6部 大陸棚」に「沿岸国は、大陸棚を探査し及びその天然資源を開発するため、大陸棚に対して主権的権利を行
使する。」とあることや、また、30年も前から中国が苦労して油田の開発をしていた経緯を考えると、中国側の主張の感覚や意味はかなり理解できますが、ただ、お互いに合意したことをキチンとその通り守ってやっていかねばならない、ということに対する感覚が少し違うのでしょうか、、。
満州に昔住んでいた日本の人たちが、今でもいわゆる「大陸的」という大らかさを示すことがあると聞いたことがありますが、例えばそういう類の違いのみが、日中間の問題の源だったりしたら、なんだか逆に呑気でいいのですが、、。
(「キー、日本、ちょっと細かすぎ!」、「キー、中国、ちょっと雑すぎ!」みたいなことだけだったりしたら(笑)、必要以上の懸念も争いも避けられるかもしれませんね!)
なんだか、間の抜けたような、希望的なことばかり書いてしまったかもしれませんが、、。一番心配なのは、お互いが、無駄に悪感情を持ってしまったり、その悪感情が悪感情を呼ぶようなことなので、お互いの頭の中では、悪意とか悪い考えがあって、諸々のことを言ったり行っているわけでないのだ、ということがはっきりすれば、それに越したことはないですね。
そのためには、岡田さんのおっしゃるように、率直に冷静に話し合いを続けることが一番ですね。岡田さんのように、勇気がある方でないと、なかなか難しいことです。
岡田さんの、「ともかく、やる」というご姿勢には、いつも感服しております。そんな素晴らしい大臣は、代々語り継がれてしまうことは間違いありません、、もう既に何度か自分が語ることを想像済みでしたからわかります!(笑)
投稿情報: レイ | 2010/05/23 00:24
正しい事さえしていれば、たとえ悪く言う人や足を引っ張る人がいたとしても、必ず成功します。
中国や韓国は、とても近いし同じアジアだし、だからこそこれからも問題がたくさん出てきてしまうと思います。
他国を非難し、自国を正当化する国は、成長しませんよね。お互いを尊重して、相手を納得させるのは簡単な事じゃないけど、岡田外相なら絶対できます。
ただ「いた」外相じゃなくて、「あの件を解決したのも岡田外相だよね~」と記憶に残る政治家さんになってください。
過去の外相さんで記憶に残っている方は、正直いません。当たり障りの無い事しかしないというイメージがあって、なんかつまんなかったから・・・。でも、岡田外相はなんか違う!!絶対やってくれますよね!!
投稿情報: いいちこ | 2010/05/23 10:41
岡田大臣の核に関するご発言は的を射たものであって、これに対して中国の大臣が怒るのには正直驚きました。こちらの被害妄想かもしれませんが、この様なことを米国政府が言っても怒らないはずなのに、日本政府が言うと許せないと彼ら(中国政府)が思っているのだとすれば日本国民として心外であります。しかしながら、その様なことを当たり前の様にしてきた今までの日本政府の対応にも問題があったのだろうと感じました。今後とも直球勝負でお願いします。特に核の問題については日本国民が特別にこだわっていることを強く主張いただければ有難く思います。(これも適切な例ではないのですが、捕鯨に冠するオーストラリア政府ぐらいの”こだわり”をみせてほしいと思います。)勿論、過去の関係で謝るべき事は謝る、
但しこちらが正しいと主張すべき点については堂々と主張する。そうすることにより日中韓の本当の友情が育まれるのだと思います。
投稿情報: y浦野 | 2010/05/25 23:36
岡田克也外務大臣、スタッフの皆さま、こんばんは。
「いわゆる名誉職に終わらない外務大臣の道」。岡田さまの姿勢、心より尊敬いたします。
すでに岡田大臣は沢山の仕事をなされました。数えきれず、全ては心に残ります。
密約のこと、安保理の議長、基地の日米合意。
岡田大臣の「決断する能力」。私は忘れません。
岡田さま、いちばん青いネクタイが似合いますね。ノーネクタイも上品で素敵です。
昨日(金曜日)、永田町の長い1日でした。お疲れでないでしょうか。
本日(土曜日)は地元での仕事をこなされたとか。たまには休憩してくださいね。拙い文章、お許しください。かしこ。
投稿情報: 井上彩 | 2010/05/29 23:18