新聞でもすでに報じられていますが、駐中国大使に伊藤忠商事の元社長・会長の丹羽宇一郎(にわ・ういちろう)さんが決まりました。このことについて、少しお話ししておきたいと思います。
私は、外務大臣になる前から、大使は国を代表するものであって、必ずしも外務官僚に限る必要はなく、適材適所でやっていけば良いと思っていました。
前任の中国大使は4年以上になり、このたび次の人を決めなければいけないタイミングが来ていましたが、なかなか外務省の中でも、多くの人が認める「この人だ」という人材がいないなかで、少し民間にも視野を広げていろいろ検討した結果、丹羽さんということになりました。
2カ月くらい前に丹羽さんにお願いし、快諾をいただきました。そのときに丹羽さんがおっしゃられたことは、いまも私の記憶に残っていますが、「残された人生を、国や公のためにしっかりと尽くしたいとかねがね考えていたので、喜んでお引き受けしたい」ということでした。
民間出身ということで、いろいろと心配する声もありますが、私は丹羽さんとは長くお付き合いさせていただいていますが、非常に立派な方です。きちんとけじめをつけて、そして何より、伊藤忠商事が危機に陥ったときに大ナタを振るって立て直した手腕、人間としての力を存分に発揮していただき、日本と中国の間という非常に難しい役割ですが、大使という重い責任を果たしていただきたいと思っています。
もちろん、外務省としては、専門家の人事配置などで十分に新しい大使をサポートできるような体制をとっていきたいと思います。
今回の人事ではその他にも、野村証券からも戸田博史さんにギリシャ大使になっていただきました。
大使という仕事は、もちろん、それまで外交官として積み上げてきた経験などが必要な部分もありますが、より重要なことは、その国で信頼され、大使館の中をしっかりとまとめ、仕事ができるということだと思います。
私が特にそのように感じるのは、例えば、アメリカのルース大使は、もちろん外交官ではなく、弁護士をずっとカリフォルニアでやってこられたわけですが、人間的に非常に立派だと思います。
だからこそ私は、今回の普天間をめぐる様々な話し合いでも、厳しかったけれどもしっかりと良い議論ができたと思います。そして、それはやはり本人の人間力の問題だと思います。
いずれにしても、丹羽さんが駐中国大使として存分に活躍していただくことを期待しています。丹羽さんが活躍されれば、またそれに続く人々も出てこられると思います。
私が今回の大使人事でもう1つだけ思うことを申し上げますと、やはり、外交官ももっと他流試合をしたほうが良いということです。
国際機関に出向する機会ももっと増やしたほうがいいし、場合によってはNGOに出て働いてみる。逆に、国際機関やNGOの人たちが外務省に来て経験をする。
そういう、こういった外交やそこに関わる分野について、人材の交流がもっと若いうちから進んで、他流試合を積んだたくましい外交官に、もっともっと育ってほしいと思います。
※ブログの動画版はこちら
>たくましい外交官に、もっともっと育ってほしい
外部から人を入れるのは、とてもよいことで、賛成です。
丹羽氏は、新聞にコラムをお書きになっていましたが、しっかりした方とお見受けいたしました。
定年制の改善をお書きになっていて、その後意見にも賛成でした。
沖縄問題ばかり取り上げられていますが、このような人事がちゃくちゃくとすすんでいるのは、政権交代できたからと思います。
投稿情報: 地球人 | 2010/06/18 21:39
民間からの選出。画期的ですね。国民と政府がまた一歩近づいたような気がします。
私の母校も。民間人校長第1号を誕生させました。残念ながら、私が卒業したあとでしたが。
岡田外相が太鼓判を押すなら、期待してみたいと思います。
投稿情報: いいちこ | 2010/06/19 11:27
一流の能力をお持ちで、その上、公のために尽くされる大きな覚悟がおありになる、、ということほど、そのような重要なお仕事をされるのに最適な方はいらっしゃらないと思います!
なにより、並外れたお仕事が出来る前提でもある、「覚悟がある」、と言うことほど、人として信頼できることはありません、、。また、その逆の「保身」ほど、残念なものはありません。「覚悟」があって初めて、人間は意味ある方向へ動き出せるものだと思います。
優れたサービスなどの、日本の独自の強みを発揮するなどして、「中国で10年以内に1000店舗を作る」という目標を掲げていらっしゃるユニクロの柳井さんが、テレビで「成長するということは生き残るということだ」とおっしゃっていました。
一個人としても、本当にそうだなあ、、、と聞いていましたが、特に今の経済の危機的状況においては、「保身=停止状態」であることは、即、国の死に繋がる、、と言うほどのことなので、ぜひぜひ、国のお仕事をされる方々には、変化を恐れず、良い方向へどんどん国が成長する為に、挑戦と決断をされる覚悟をお持ちになって頂きたいです。
岡田さんが、また一つこの人事で、大きな新しい決断を見せて下さったように!
投稿情報: レイ | 2010/06/20 16:23
表面的な問題よりも、内容です。
政治家の役の上手な映画俳優だというだけで大臣や、首相をまかせられないのと同様に、著名人と言うだけで大使を任せることはできません。
米国は中国には専門家を大使として送り、日本には素人を送ったというのが世界のメディアの判断です。
とにかくアメリカのエリートには、共和党・民主党を問わず日本をおとしめようという勢力があります。
日本に三流の大使人事をして、みんなで喜ぶという、非常に愚劣なアメリカの一部エリートの姿勢があるのではないかと疑われています。
クリントン大統領ですら超えなった一線をオバマ側近は超えてしまったのではないかと思われます。
しかし、今ではアメリカの外交は世界で尊敬されていません。中国のカネ欲しさに中国を持ち上げるという醜い外交は世界から見透かされています。
日本の外交は、まず日本の国益を理解して、その上で世界各国との調和を図るというのが基本です。
企業トップはあくまで個別利益の代表を経験してきたにすぎません。ライバル企業のためにも外交ができるのかという懸念があります。
まあ、自民党時代の中国大使も中国の反日政策を傍観するような人が多かったようですから、民主党の大使専任に大きな反発はないでしょうが・・・
投稿情報: 一国民 | 2010/06/20 23:55
民間より大使起用は大変意義のあることと思います。
在外大使館との密接な業務の経験からも大いに時宜に適った決断でしょう。さらに今回お二人を含め人間力の「魅力」十二分です。
ことに丹羽さんの豪胆さ、几帳面さ、勉強家として折紙つきと思われます。
元商社員
投稿情報: 俵 俊徳 | 2010/06/21 16:18
岡田大臣の構想に賛成。
小生もかねて、同様に思う事がありました。
ODA関係の実務、貿易関係での国際交渉を多少経験した上では強く感じます。
投稿情報: 俵 俊徳 | 2010/06/21 16:25
中国大使の民間からの起用に拍手。大使が外交官で無くても良いとのご意見に100%賛成です。正直、30年以上前から外交官のあり方自体が古きよき時代の習慣から抜け切れていないのでは無いかと強く感じておりました。世界が急激に狭くなっているのだから、昔は重要だった外交技術よりもビジネス感覚が重要になってきていると思います。外交官も他流試合をして逞しくなるべきとのご意見にも100%賛成です。但し、一言、これは同じ商社出身者としての愚痴ですが、何故か伊藤忠出身者ばかり活躍されるのですね。
他省庁の役人や学者にも人材はいると思います。そして政治家出身者が大使になっても良いと思います。何といっても外交は内政の延長なのですから。昔、マンスフィールドさんやハワードベーカーさんが日本大使に就任された時の安心感を思い出しています
投稿情報: y浦野 | 2010/06/22 10:19