今回、インドとタイへ出張をしてきました。その報告として、今日は、インドについて申し上げたいと思います。
インドでは、クリシュナ外相のほか、シン首相とも会って、大きく言って3つの問題について議論してきました。1つは経済の問題で、具体的には日本とインドのEPA(経済連携協定)交渉の問題です。第2に、原子力協定の問題。そして、第3に、国連安保理改革の話です。いずれも大変重要な話で、私もかなり力が入りました。
インドは言うまでもなく新興国の1つで、人口から言っても、やがて中国を抜いて世界一の人口大国になる。そして、中国に少し遅れましたが、経済も、先ほど申し上げ今回お会いしたシン首相の改革政策の下で、高度成長をスタートさせた国です。あわせて、民主主義国家ということも大きな魅力です。
そのインドに対して、まず経済の問題。具体的には、日印EPA交渉ですが、これを、今年の秋のシン首相が日本にお見えになられるまでに、しっかりとまとめようということで、スケジュールについて議論しました。
まだ、いくつかの問題が残されています。例えば、自動車部品についての関税が高いことで、これを日本としては下げてもらいたいと思っています。
そして、インド側からすると、看護師や介護士について、インドネシアやフィリピンと同じように、日本に人を出したいということで、そういった問題についてどのように改正するか。
いずれにしても、しっかりとスピード感を持って、このEPA交渉をまとめていくことによって、私は日本とインドの経済関係は、いまよりも1桁多くなる、つまり10倍になっても何も驚かないと申し上げておきました。
いまインドには、ビジネスマンを中心とした恐らく3,000人弱の日本人がいます。しかし、その10倍以上の人たちが例えば上海で働いています。
そういうことを見ると、近い将来、10倍くらい日本とインドの投資や貿易、人の交流などが増えても何ら不思議ではないと思います。
2番目は原子力協定の話です。また別の機会で詳しくお話する機会があるかもしれませんが、インドは、NPT(核不拡散条約)に入っていません。そういうなかで、核開発を行ってきて、よもや核を持つ国になりました。
インド側に言わせると、「隣のパキスタンでも核開発を行っている。そして、中国との関係やバランスもある。だから、インド自身も核を持つ」ということです。
ただし、それをそのまま認めて原子力協定を結び、日本が民生用の原子力発電の開発に手を貸すということになると、それが核の拡散につながるのではないかという議論が国内でもたくさんあり、皆さんご存じのとおりだと思います。
インドは、いま核実験をやらないことを自主的に宣言していますが、私は「インドがもし核実験をすれば、日本の原子力協力は停止せざるを得ない。もちろんインドが核実験をすることは、私は考えてはいないけれど」ということを申し上げました。
いずれにしても、核軍縮・核不拡散の考え方を、どう日印原子力協定のなかに盛り込んでいくか。交渉はスタートしたばかりですが、これからしっかりとした交渉が求められています。
そして、3番目は国連安保理の話です。2005年にG4、つまり日本、インド、ブラジル、ドイツが1つになって、国連安保理の常任理事国にG4を加えるべきだという議論をしました。
3分の2の賛成がなければ国連総会で決議できないので、そのときには、アメリカや中国の反対やアフリカの賛同を得られないことで、最終的に断念した歴史がありました。
しかし、もう1度これを是非チャレンジしたいと考えています。そういうなかで、インドとこれからの持っていき方などを話し合いました。
この安保理改革の話は、日本が常任理事国になりたいからということだけではありません。第2次世界大戦後の戦勝国が、常任理事国を65年間も続けてきており、世界全体を見回してみても、グローバルガバナンス、つまり、いまの世界における力関係をきちんと反映した常任理事国でなければならないと我々は考えて、安保理の改革を訴えてきたわけです。
そういった大きな3つの点―経済、原子力協定、そして安保理改革―について、大変有意義な意見交換が出来たと思います。
※岡田かつやのインド訪問概要は、外務省のホームページからご覧いただけます。
※ブログの動画版はこちら
そのインドに対して、まず経済の問題。具体的には、日印EPA交渉ですが、これを、今年の秋のシン首相が日本にお見えになられるまでに、しっかりとまとめようということで、スケジュールについて議論しました。
まだ、いくつかの問題が残されています。例えば、自動車部品についての関税が高いことで、これを日本としては下げてもらいたいと思っています。
そして、インド側からすると、看護師や介護士について、インドネシアやフィリピンと同じように、日本に人を出したいということで、そういった問題についてどのように改正するか。
いずれにしても、しっかりとスピード感を持って、このEPA交渉をまとめていくことによって、私は日本とインドの経済関係は、いまよりも1桁多くなる、つまり10倍になっても何も驚かないと申し上げておきました。
いまインドには、ビジネスマンを中心とした恐らく3,000人弱の日本人がいます。しかし、その10倍以上の人たちが例えば上海で働いています。
そういうことを見ると、近い将来、10倍くらい日本とインドの投資や貿易、人の交流などが増えても何ら不思議ではないと思います。
2番目は原子力協定の話です。また別の機会で詳しくお話する機会があるかもしれませんが、インドは、NPT(核不拡散条約)に入っていません。そういうなかで、核開発を行ってきて、よもや核を持つ国になりました。
インド側に言わせると、「隣のパキスタンでも核開発を行っている。そして、中国との関係やバランスもある。だから、インド自身も核を持つ」ということです。
ただし、それをそのまま認めて原子力協定を結び、日本が民生用の原子力発電の開発に手を貸すということになると、それが核の拡散につながるのではないかという議論が国内でもたくさんあり、皆さんご存じのとおりだと思います。
インドは、いま核実験をやらないことを自主的に宣言していますが、私は「インドがもし核実験をすれば、日本の原子力協力は停止せざるを得ない。もちろんインドが核実験をすることは、私は考えてはいないけれど」ということを申し上げました。
いずれにしても、核軍縮・核不拡散の考え方を、どう日印原子力協定のなかに盛り込んでいくか。交渉はスタートしたばかりですが、これからしっかりとした交渉が求められています。
そして、3番目は国連安保理の話です。2005年にG4、つまり日本、インド、ブラジル、ドイツが1つになって、国連安保理の常任理事国にG4を加えるべきだという議論をしました。
3分の2の賛成がなければ国連総会で決議できないので、そのときには、アメリカや中国の反対やアフリカの賛同を得られないことで、最終的に断念した歴史がありました。
しかし、もう1度これを是非チャレンジしたいと考えています。そういうなかで、インドとこれからの持っていき方などを話し合いました。
この安保理改革の話は、日本が常任理事国になりたいからということだけではありません。第2次世界大戦後の戦勝国が、常任理事国を65年間も続けてきており、世界全体を見回してみても、グローバルガバナンス、つまり、いまの世界における力関係をきちんと反映した常任理事国でなければならないと我々は考えて、安保理の改革を訴えてきたわけです。
そういった大きな3つの点―経済、原子力協定、そして安保理改革―について、大変有意義な意見交換が出来たと思います。
※岡田かつやのインド訪問概要は、外務省のホームページからご覧いただけます。
※ブログの動画版はこちら
インドとタイへの長旅、お疲れ様でした。
インドの人口がそんなに多いとは、ちょっとビックリです。それだけ住むのに適した土地なのでしょうか?イメージ的には、砂漠っぽくて、人が住むには適していない感じなのですが。
インドに行ったのなら・・・。カレー召し上がられましたか?本場のカレーは絶対美味しそう。インド人はカレーを食べないと言う噂を聞いたこともありますが、どうなんでしょう。
暑い夏に暑い国に行ってのお仕事、大変だとは思いますが、これからも健康第一で頑張ってくださいね。
投稿情報: いいちこ | 2010/08/25 12:08
先週の金曜日からのインド、タイでのお仕事、お疲れ様でした!!24日には、帰国された岡田さんが日本で活躍されていたので、やったー!岡田さんが帰ってきた!!と喜んでいたら、また今週中に中国やモンゴルにお出かけになるかもしれないんですね。結果をお聞きするのはとても楽しみですが、夏休みに溜めたエネルギーを、すぐに使い切らないで下さいね、、!
インドは、経済的にグイグイと発展していて、ものすごいパワーがあって、日本の方々も既に沢山働いていらっしゃるイメージがありました。それなので、「インドに日本人の方が3千人」、とお聞きして、意外に少ないように感じました。ですから、岡田さんのおっしゃるように、その10倍の方々が働かれるようになるのも、すぐに実現するという感じがします。
その為の様々な交渉、大変でいらっしゃるでしょうが、どうぞよろしくお願いいたします!
原子力協定のことですが、「インドがもし核実験をすれば、日本の原子力協力は停止せざるを得ない。」という、岡田さんの確固たる主張がある限り、安心です。また、この主張は、7月2日の記者会見で岡田さんがおっしゃっていた「緩やかであっても一定の枠組みの中に入れるという効果はあると思います。」ということの早速の「枠組み効果始動!」という感じでもあるのでしょうか!?
だとしたら、苦しい決断にも光が見え出しますね!原子力協力をすることで、核関連でインドの周囲に接近して、力ある言葉を聞いてもらうことが逆に可能になるというのは、インドにおける核軍縮・不拡散のチャンスでもあるかもしれません。
それにしても、核の問題は、私には禅問答のように常に複雑に感じられてしまいます。今やその先があるのかも分からない、「もし~ならば」ということだらけで出来ていて、、。考えてみれば、核を取り巻く世界は何層もの「もし」で構築されているので、逆に目を塞いでその存在に耐えていられる部分もあるのかもしれないけれど、「もし」が原因で世界中に広がってしまった核の存在と実体そのものを直視してみれば、、、その保有そのものが人として恥ずべきことであるが故に、本来ならばどんな国の誰もがすぐに手放したくなってしまうはずのものなんですよね、、。当たり前のことですが、「今核を自分たちが持っていることは、『もし~なら、~だからだ』けれど、実は、自分たちが持っていること自体、人としてもう、自らぞっとすることで、本当は耐え難い」という気持ちに、まずはなっていただきたいですし、唯一の被爆国日本の持続的訴えにより、可能なことだとも思います。
ある人にとっては当たり前なので、他の人にはあまり言わないことでも、案外言ってみると、その人は、意外なくらい単に「聞き慣れていない、考えたことがない」から当たり前としていないだけで、言われて納得してくれることも多いと思います。一言一言に効果があることを信じて進むことも、大事なのかもしれませんね。
安保理改革ですが、岡田さんは、この一年間、多くの国の外相などとお話をされて、機会あるごとに協力をお願いされて、その度に良いお返事を頂いておられましたね!!なんだか、楽しみになってきました~!!
投稿情報: レイ | 2010/08/25 13:10
岡田さんのBlogは日本の外交の重要な問題を端的に作文されていて とてもわかりやすいです
インドは核保有国であり平和的外交の最終目的に核放棄まで実現できる世界情勢になれば良いと思います ここからが外相の手腕の発揮しどころですね 頑張ってください!
投稿情報: 美華♪ | 2010/08/26 01:11
岡田さんがおっしゃられているように、インドにおいては、今後、高い経済成長が見込まれ、それにともない、エネルギー消費が急速に拡大することが予想されています。
拡大するインドのエネルギー需要を見越し、トルクメニスタンの天然ガスをアフガニスタン、パキスタンを経由し、インドに供給する、いわゆるTAPIパイプラインなどの建設計画も検討されているようです。
しかしながら、海外からの化石燃料の輸入は、輸送ルートをめぐる安全保障上の問題をともない、かえって、地域情勢不安定化の要因となる危険性もあると思います。
このため、長期的には、インドのエネルギー消費に占める再生可能エネルギーの比率を高め、持続的かつ安定的な経済成長の基盤を整備して行くことが大切と思われます。
インドでは、すでに国産の低価格の電気自動車が市販されています。また、太陽電池、風力タービンを生産する国内企業も育ってきています。
今後、太陽電池の大量生産にともないコスト低減が進み、GRID-PARITY(再生可能エネルギーによる発電コストと既存エネルギーによる発電コストが並ぶこと)が実現することで、インドにおける、太陽電池の普及可能性が拡大すると思われます。
なお、温室効果ガスにつき、現在、日本は、インドとの間で、2国間のオフセット合意を結んでいますが、将来的には、国連気候変動会議において、国際的な排出量取引条約を締結し、政府主導でなく、市場メカニズムを通じて、新興国における再生可能エネルギーの普及拡大を促進することが有効と思われます。
投稿情報: BUSINESS LIBERALISM | 2010/08/30 13:21
情報も不十分で関連する事が複雑すぎて分からない事が多いが、なぜNPT不参加のインドだけ原子力協定を結ぼうとしているのか?
インドだけが例外でこれで最後だとおっしゃった、つまりパキスタンや北朝鮮はないという事をおっしゃりたかったんでしょう、だがなぜ被爆国の日本がこの様な筋の通らない外交をするのかと愕然としてしまった。
一度進みだしたら後戻りするのは殆ど不可能である、外国の人間は日本人が想像するよりはるかにしたたかである、日本は大きな間違いを犯そうとしていると思う。
しかし日本には国家としての力が不十分なのも現実だ、そこでもし仮に原子力協定が避けて通れない道なのだとするなら、消極的ではあるがニュースでコメントしていたアメリカ人のアイディアの様になるべく踏み込んだ協定にするのが望ましいだろう。
中東での原発売り込みに失敗した日本としては政府に対して恐らく日本の原子力産業界からの要望が強いのだろう、つまりはカネなのだろうが、そもそもこの原子力関連の事で良い事聞く事は余り無い、調べれば調べるほど恐ろしく厄介なものであるという事を理解する。
作ったは良いが、その後仮に運用が4~50年で終了し不要な施設を解体するとなると、それが非常に困難が伴うのはドイツの解体例を見れば明らかで、その費用は原発が生み出した収益を上回る可能性もある。
日本はエネルギー自給率が低く輸入に極端に依存しているいびつな国である、原油が仮にストップすればたちまち日本はパニックに陥るだろう、そこで原子力エネルギーなのかもしれないが、ここにも大きな利権が絡んでいるのは容易に想像できる。
地球温暖化と関連付けて、二酸化炭素を直接排出しない原発は再利用可能な自然エネルギー等とアピールしているが、どうしてこんな厄介なエネルギーに固執するのか、なぜその他有望な分野や新技術の促進を進めないのか普通の感覚では理解できない、そこには実は原発と核兵器と切っても切れない関係があるというのは容易に想像できる。
その核兵器を大量に保有しているのは何処か?おのずと答えは見えてくる。
食料、エネルギーは国民の生命に直結する大きな問題である、しかしこの2つを日本は外国に依存している、なぜ日本はこんないびつな形になってしまったのか?
先日も日本国籍の石油タンカーがテロに見せかけた攻撃を受けたが、原油がストップしたらどうなるんだ?と仮に他国に脅されたら何も太刀打ちできない程エネルギー事情はお寒い状況である。
経済的繁栄のみを追いかけその他の状況をおろそかにしてきたこれまでの日本の歩みを振り返り、一度立ち止まり、これからの日本はどうあるべきか国民的議論をする時ではないのか?
インターネットが発達した今かつての様に国民を欺き続けるのはそれ程容易ではない、もし民主党までも国民を欺くような事があればその罪と傷の深さは自民党時の比ではないという事をよく肝に銘じておいて頂きたい。
投稿情報: 松崎としお | 2010/09/01 01:33
少し前のものになりますが、報道写真家・森住卓さんのHPに、こんな報告があります。
http://www.morizumi-pj.com/jadogoda/jadogoda.html
核実験をしない宣言をするということは、おそらく広島型のウラン型爆弾を保有する、ということだと思いますが、その原料を採取するウラン鉱周辺ではこのような症状が広く見られており、地域住民の健康・人命が脅かされています。
旧政権下でのこととはいえ、状況は基本的にはそれほど変わっていないでしょうから、先住民差別の問題とあわせ、住民の「自由」は脅かされており、またそれに伴って社会保障費増大の一因となっているでしょう。
核に伴う政治政策は、国内であれ国外であれ、こうした現実に伴う社会的コストの面をも考え合わせた上で行うべきで、イデオロギー的地政学的判断のみに従うべきではないと個人的には思うのですが、岡田大臣はどのようにお考えでしょうか?
外務大臣としての業務お忙しい中でしょうが、御教示いただければ幸いです。
投稿情報: 藤盛 | 2010/09/06 03:14
連続投稿で失礼しますが、介護士・看護師の受け入れについてひと言。
日本人には高齢者を中心として、まだまだ外国人アレルギーがあると思います。
現在、フィリピンやインドネシアといった国からの受け入れが行われていますが、条件の厳しさと受け入れ態勢の不備から、日本に来たがらない学生が多いということも、メディアを通じて見聞きします。
条件見直しの検討と、これは文部科学省との調整になるかと思いますが、フランスが80年代に行ったような外国文化についての教育というのを、今後のためにも、導入すべきではないかと思います。
投稿情報: 藤盛 | 2010/09/06 03:38