今日は北朝鮮の問題について、少し私の考えをお話ししたいと思います。
言うまでもなく、北朝鮮の地下核実験を契機にして、いま国連の安保理(安全保障理事会)で制裁の決議の議論が行われています。
詳細は、私自身も知り得る立場にありませんが、北朝鮮との金融取引の制限、あるいは武器取引の制限、そして、北朝鮮に出入りする船舶の臨検、こういったことが議論されていると理解をしています。
私は、ここは非常に重要な局面だと思います。つまり、北朝鮮が核保有国として既成事実化する。核を持っている国として、そのことを前提に、今後様々な交渉をする。そういったことを狙っての、今回の無謀な地下核実験だと思います。
我々としては、そういった既成事実化を認めない。核を廃棄しない限り、北朝鮮にとって未来はない。そういったことを、サインとして、シグナルとして明確に送り、その実効性を上げるために安保理での決議を行う。ここは、簡単に後退してはいけない非常に重要な局面だと考えています。
もちろん、安保理の決議を行うためには、ロシアや中国がそれに賛同しない限り、決議はできません。中国やロシア、特に中国について、北朝鮮の核が既成事実化され、ミサイル開発が進めば、これは中国自身にとっても、極東全体の安定にとって大きな制約であるということを粘り強く説明し、そして、ともにこの決議に参加をしてもらわなければならないと思っています。
北朝鮮が、なぜいまここで強硬な措置に出ようとしているのか。この核の既成事実化の他にも、国内の様々な北朝鮮の内部事情もあるのだろうと想像されます。しかし、ここは想像の世界であって、具体的なことは分かりません。
私が非常に懸念するのは、この問題は国連決議ができたとしても、それで終わるのではなくて、北朝鮮もさらに過激な行動に出てくることが当然予想されるわけです。したがって、例えば1994年の朝鮮半島危機、細川政権・羽田政権のときですが、このことを思い出すわけです。
あのときには、あとで明らかになったことですが、アメリカ政府は北朝鮮に対する武力行使をほぼ決めていた。最後の場面で、カーター元大統領が北朝鮮に行き、そして合意ができることで、その危機は回避されたということです。
我々は、あのとき与党の側にあったわけですが、そういった朝鮮半島の危機が起こったときに、日本が対応できるだけの法律上の準備がないという反省に立って、現在の周辺事態法などができているということでもあります。
したがって、あのときの再来はないと考えたいとは思いますが、最悪の場合、非常に緊張する場面、緊迫する場面にならないとも限らないと思います。
北朝鮮は当時と比べても、核を持ち、ミサイル開発が進み、より強い立場になっているということは忘れてはならないと思います。他方で、北朝鮮の弱みは、リーダーが健康上の問題も抱えて、そうゆっくり時間をかけられないと、そういう状況にもあります。
そういう中で各国が一致して、核の放棄、国際社会への復帰、そういったことを北朝鮮に呼びかけていかなければなりません。その過程で、拉致の問題も含めてしっかりと解決をしていく。まさに、日本外交は正念場を迎えていると思います。
我々も総選挙を経て、政権政党になる可能性が非常に高いわけですから、この問題は単なる野党としての立場ではなくて、まさしく当事者として情報も集め、間違いない判断をしていかなければならない。改めて、そう感じているところです。
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10年前から北朝鮮には4~5発程度の原爆があると言われてきました。
1998年のパキスタンの核実験には北朝鮮も関与したとされています。
(参照:http://www.asahi.com/international/update/0525/TKY200905250438.html)
そういう意味では隠されていた秘密兵器を表に出しただけという見方もできます。
1回目の核実験が基本的な失敗だったのか、弾頭搭載用の小型化の技術実験としては成功だったのかの評価もまだ分かれています。
しかし、中国は北朝鮮がワシントンDCを狙える核ミサイルを保有することには絶対反対しているはずです。
従って、今年の一連の核・ミサイル実験は、米国ではなく、むしろ中国に向けられたものと考えることもできます。中国を対象としての水際作戦のような気がします。
その理由は後継者問題でしょう。中国が望む北朝鮮の次の体制と、北朝鮮の軍部が望む金正日後継者が異なるため、北朝鮮の軍部が中国に対するけん制として実施しているという見方もできます。
石油の供給を中国に頼っている北朝鮮ですが、中国の軍事緩衝地帯としての役割を負わされてきた北朝鮮は、中国との間で(二国間の)複雑なパワーゲームを行っているという感じがします。
従って、核やミサイルで日本を威嚇して、日本政府に貿易を再開させるなどという意図はないと思われます。
むしろ、北朝鮮内の中国に近い勢力と、独立志向の勢力が衝突し、中国が物理的に介入して収束する、又は、混乱が顕在化する可能性が強いと思います。
もし、中国と北朝鮮が離反し、ロシアやイランなどが北朝鮮にエネルギー支援をするようになれば、これは大きな変化ですが、それは、中国・ロシア・北朝鮮側の変化であり、日本・米国・韓国に対する姿勢は変わらないと思われます。
(特に中国が大量の米国債を保有する今日、米国が中国と北朝鮮の関係に大きな影響力を行使できるとは思えないし、中国が米国による北朝鮮の核基地攻撃を認めるとも思えません。ただし、共和党はオバマ政権が朝鮮半島で失敗し、2012年の再選を不可能にするために、中国とのパイプを利用し、緊張を煽ることは考えられます。陰謀論の世界になりますが。)
日本としては、「金正日の次の世代での拉致問題解決」のために、まず何らかの関係を築いておくか、あるいは、拉致問題の完全解決がなければ、米国の軍事力を背景にどこまでも敵視政策を続けるかの選択しかないようです。
(この軍事力重視の延長で、日本の軍備増強・日米同盟の見直しという歴史的問題も関わってきます。)
拉致家族に同情しない日本国民はいませんが、「金正日の次の世代での拉致問題解決」のために、まず何らかの関係を築いておくことに、本心から反対する国民はむしろ少ないと思います。
北朝鮮との不戦条約などというと冗談のようですが、そういうオプションも民主党政権は検討すべきです。いずれにしても、日本国政府は「戦争布告」をすることは憲法で禁じられていますから。
まぁ、北朝鮮状況が本当に大きく変わるのは、鳩山首相の次の岡田首相の時代、2012年の米国大統領選挙の後ではないかと思います。
投稿情報: 一国民 | 2009/06/03 00:53
北朝鮮の核実験について、27日の朝日新聞での元防衛大臣石破茂氏と民主党浅尾慶一郎氏のインタビュー記事が気になりました。
浅尾氏は、敵基地攻撃の議論をすべきとのことでした。相手に対し強い態度をとることは大切だけれど、「先に撃つ」という発想は危険だと思います。
岡田さんの志は大変素晴らしく、心から応援しています。絶対に首相になって日本を導いていかれる方だと思っています。
頑張ってください!
投稿情報: 佳誉 | 2009/06/04 01:01
報道によると、現在、国連の制裁決議の一環として、北朝鮮船舶に対する臨検(貨物検査)の実施が検討されているそうです。核兵器や核物質がテロリストの手に渡る可能性を排除するため、実効性のある国際的措置を検討することは必要であると思います。仮に核兵器や核物質がテロリストの手に渡れば、世界中の国々が深刻な脅威を受けることになるからです。
ただ、すべての海上輸送を監視するのは不可能であり、臨検は、その実効性に限界があります。その一方で、臨検は、その性質上、軍事的衝突を招く危険性がきわめて高いと思います。今後、北朝鮮が、自国船保護のため、軍艦を併走させる可能性もあると思います。その場合、臨検を強行すれば、海上での交戦もありえます。さらに、北朝鮮が別途報復攻撃を行なう可能性もあると思います。
岡田さんがおっしゃられているように、今後、北朝鮮は、さらに過激な行動に出てくる可能性があると思います。軍事的緊張が高まることは、北朝鮮国内において、軍の求心力を強め、体制強化という効果を生むからです。
仮に海上あるいは陸上で軍事衝突が起こった場合、韓国・日本・中国の金融・株式市場に一時的に大きな影響が出ると思われます。さらに、軍事的対立が長引けば、海上保険料の高騰、物資流通の停滞、対外投資の縮小など、北東アジア地域の産業・経済に深刻な影響が出る可能性があります。日本国民の生命・身体に直接的な脅威が及ぶかも知れません。
臨検については、綿密な情報の収集・分析に基づき、当該船舶の核兵器・核物質積載がほぼ確実であり、テロリストの手に渡る具体的危険性・切迫性が存在し、他に阻止する手段が存在しないなど、きわめて限定的な場合を除いては、実施すべきでないと思われます。
北朝鮮に対する制裁は、金融制裁、および中国を含めた関係各国による経済制裁を軸にして、検討、実施することが適切であるように思われます。
投稿情報: BUSINESS LIBERALISM | 2009/06/04 17:21
北朝鮮の核問題については、短期的措置と中長期的措置の両面の対応が必要であると思います。
短期的には、岡田さんがおっしゃられているように、北朝鮮の核保有を既成事実化させないため、国際社会が一致して、制裁を実施することが必要だと思います。北朝鮮に対し、核兵器開発はいっそうの国際的孤立へつながること、核兵器開発の放棄がなければ国際社会への復帰はありえないことを、明確かつ具体的に示すことが必要だと思います。
一方、中長期的には、北東アジアにどのような安全保障枠組みを作るのか、さらに、北朝鮮をどのようなプロセスを経て国際社会に復帰させるのかという点につき、アメリカ、中国、日本、韓国、ロシアの間で、大局的・基本的な共通理解を形成していくことが必要だと思います。
アメリカでは、今年、悪の枢軸論・核先制使用を唱えたBUSH政権が去り、対話を重視し、核廃絶を求めるOBAMA政権が成立しました。
日本でも、現在、核武装論や敵基地攻撃論を議論する自公政権に代わり、民主党政権が成立する可能性が高まっています。岡田さんを始め、民主党の核軍縮促進議連は、「北東アジア非核兵器地帯」を提唱しています。
中国でも、国内に、思想統制・対外強硬論を唱える保守派と、改革開放・国際協調を進める改革派が存在します。
大切なことは、世界的な核の抑制、核軍縮、核不拡散の流れが存在する今こそ、話合いと国際協調を求める各国勢力が互いに力を合わせ、北東アジアに恒久的で安定的な安全保障の枠組みを確立することだと思います。
ちなみに、イランでも、今月中旬に、大統領選挙が行なわれます。現職のAHMADINEJAD大統領が対外強硬派なのに対し、対立候補のMOUSAVI元首相はアメリカとの対話を公約としています。MOUSAVI大統領が誕生すれば、イランの核問題も解決への方向性が生まれると思われます。
逆に、北朝鮮の核問題が解決せず、イランの核問題・イランとイスラエルとの対立が悪化するようであれば、数年後に、再び、世界各国で保守派が台頭する可能性があると思います。
投稿情報: BUSINESS LIBERALISM | 2009/06/05 09:21